「厳寒の冬景色のなかに、ぽつんと小さな恋の温もりを感じる」ぼくのエリ 200歳の少女 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
厳寒の冬景色のなかに、ぽつんと小さな恋の温もりを感じる
同じくヴァンパイアと人間の恋物語を描いた『トワイライト・サーガ』シリーズとはかなり趣が違う。本作はファンタジーではない。幼い恋をとりあげながらダークだ。
陰惨な事件は、生きるための狩であり、夢とか希望とは無縁の現実的な行為だ。
クラスの仲間からいじめを受ける少年と、世間の目を欺きながら生きながらえる少女、このふたりが徐々に惹かれ合っていく様は、社会に対する反発の裏返しであり、社会からの逃避だ。その出会いと恋の芽生えは大人たちの目から見れば危ういが、幼いふたりにとってはたったひとつの逃げ場所なのだ。テーマとしては「小さな恋のメロディ」(1971)の趣である。
本作のトーマス・アルフレッドソンもマーク・レスターに負けないくらい、透明感のある瑞々しさがあり、幼い少年のナイーヴさもよく出ている。リーナ・レアンデションの方も、姉さん女房的なしっかりした顔立ちだ。血の飛沫が妙に美しく似合う表情をしている。血の味がするファースト・キスも衝撃的だ。
ふたりの恋の行方がどうなるのかは伏せておくが、厳寒の冬景色のなかに、ぽつんと小さな恋の温もりを感じる、そんな作品だ。
だが・・・、もうひとつの見方もできる。少女はヴァンパイアとして本能的に新たな保護者を欲していただけだとしたら、少年はゆくゆく映画の冒頭に出てくるような老人になってしまう。この受け取り方だと、この作品はロマンスではなく、とてもとてもダークなSFということになる。
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