「小規模ながらしっかりした作りの韓流サスペンス」シークレット(2010) 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
小規模ながらしっかりした作りの韓流サスペンス
韓国発のサスペンス映画。
裏社会の大物の弟であるヤクザが殺され、その犯人が実は自分の妻なのでは?と疑う刑事の話。
聞いての通り、さして珍しい筋立てでも無ければ大スケールの物語でもない。だがサスペンスの引っ張り方が巧みで、ダレることなく最後まで観られる。
主人公は妻が犯人だと思い込み(なぜか妻は夫に真相を話してくれない)、あろうことか妻に繋がる証拠を次々と隠滅していく。
このパターンで常套なのは、主人公の行動を疑う人物の存在だろう。実際、主人公と仲違いしている同僚刑事が彼を疑ってかかる。
だがこの映画では更に面白いひとヒネリが加えられる。殺されたチンピラの兄——つまり前述の裏社会の大物・通称“ジャッカル”が事件捜査に乗り出すのだ。
フツーの刑事以上にキレ者で裏事情にも通じるジャッカルは、確実に主人公の妻を追い詰めてゆく……目的が“逮捕”でないのは明白です。うーん、怖い。
更には事件の真相を知る“ピエロ”と名乗る謎の人物が、妻に繋がる証拠をネタに主人公を強請(ゆすり)にかけ始め、事態はますます混乱してゆく……。
映画のタイトル通り、事件の鍵を握るのは登場人物らが抱える秘密。
妻は本当に人を殺したのか。
そもそもなぜ、夫に隠れてヤクザに会っていたのか。
また、ジャッカルの目的は本当に私怨を晴らす事だけなのか。
主人公とその愛人が妻に対して隠している秘密とは。
各登場人物が抱える秘密がひとつひとつ解き明かされる度、事件の全貌が少しずつ明らかになってゆく感覚が気持ちいい。サスペンスとしての吸引力も最後の最後まで持続され、「成程そう締めるか」とニヤリ。
けど、主人公に危機が迫った時に必ずT・スコット監督作品か『CSI』みたいな編集(短いカットを繋いだりフラッシュが焚かれたり)になるのは……。緊張感を高めたいのは分かるが、編集がヤカマシ過ぎて何が起こっているかよく分からん(笑)。
また、主人公と妻の不和の原因となった一人娘が、夫婦にとっていかに大切な存在なのか、そこの描写が薄いのは非常に残念。
あとは謎の人物“ピエロ”の正体。こいつは傑作サスペンス『ユージュアル・サスペクツ』の“カイザー・ソゼ”みたいな重要なドンデン返し要素なんだが……途中で正体分かっちゃいました。サスペンスを観慣れてる人間なら割と簡単に見当が付くかな?
だが、なかなかどうして侮れない出来。観て損ナシ!の佳作ですよ。
<2010/10/30観賞>