「きこえるからしら さめないゆめ」赤毛のアン グリーンゲーブルズへの道 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0きこえるからしら さめないゆめ

2025年6月3日
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鑑賞方法:映画館

笑える

知的

幸せ

2025年映画館鑑賞53作品目
6月1日(日)イオンシネマ新利府
ファーストデイ1100円

監督と脚本は『火垂るの墓(1988)』『おもひでぽろぽろ』『平成狸合戦ぽんぽこ』『ホーホケキョとなりの山田くん』『かぐや姫の物語』の高畑勲
脚本は他に『高原のお嬢さん』『青春ア・ゴーゴー』『孤島の太陽』の千葉茂樹と翻訳家の磯村愛子と『救いたい』の神山征二郎

粗筋
田舎で二人暮らしのカスバート老兄妹は共に独身で子供がいなかった
働き手として10歳くらいの男の子を孤児院から預かり教育を受けさせ家庭を持たせ後継ぎになってもらおうと考えた2人だったが手違いでやって来たのは11歳のお喋りな女の子だった
孤児院に返すつもりだったが考えを改め引き取ることに

時代は1890年代
カナダのプリンスエドワード島
愛媛県とほぼ同じ広さで東京都の3倍の広さ
当時はわからないが今の人口は13万9千人くらい
深谷市と同じくらいだが人口密度は全く違う
島ごと州でプリンスエドワードアイランド州とも呼ばれている
島といっても大きめの島で島の有力者の働きかけのためか馬車だけでは不便なので汽車も走っていた
車社会のためか今では廃線になっている
その代わり本土から橋が掛かっていて州都シャーロットタウン行きのバスが走っているらしい
赤毛のアンの故郷として日本人観光客がそこそこやって来るそうだ
ラムサール条約に指定されるような自然豊かな肥沃な土地だが要するにド田舎
それでも愛媛県よりは一万人ほど人口が多い

グリーンゲイブルズとはカスバート兄妹の自宅の屋号のこと

TVアニメ1話から6話の再編集のため名前こそ出るが親友ダイアナそのものは登場しない
土地柄に合わせたのか随分とのんびりとしたアニメで第4話なんてアンとマリラが自宅から馬車でスペンサー夫人の家に到着する前のおしゃべりだけに終始している

見所はアン独自の世界観から駆り出すマシンガントークと現実主義者マリラの冷たいツッコミという会話劇

マシューは女が苦手だがちょっとした恥ずかしがり屋であってヒゲゴジラのような恨みがあるわけでなさそうだ
口数は少ない
アンのおしゃべりには「そうさのう」程度でツッコミはない

アンは赤毛にそばかすで痩せ方の少女
呆れるほどのおしゃべりだがブルエット夫人のようなタイプに出くわすととたんに無口になる

アンは幼い頃に両親を亡くし身内を盥回しにされた挙句に孤児院生活に
だからといって番場の忠太郎のようにヤクザになるわけではなかった
彼女の妄想癖は詩的でポジティブで憎悪がない
それは彼女が生きるための希望そのもの
ネトウヨの妄想にはアジア系外国人やパヨクに対する憎悪
パヨクの妄想には保守に対する勘違いにも似た憎悪
キモオタの妄想には美少女アニメを嫌う者たちへの憎悪がある
他責思考の彼らは敵がいないと自分を保てないのだ
妄想癖といってもアンとは歴然な違いがある
多くの人々から赤毛のアンが長く愛される理由のひとつがそこにある
彼女の生き方そのものが赤毛のアンを不朽の名作にしている

スクリーンで初めて観た赤毛のアン
オープニングテーマ『きこえるかしら』に胸踊る「懐かしい」
歌い始めたらすぐに間奏に入るがあれがまた良いんだな
生まれつきの野暮天な自分でもこのサイズでやっとアンの感動に少しは近づけた気がした
グリーンゲイブルズへの花の道はアンの希望

だが自分はお喋りな人は苦手だ
仙台やイオンモールなどで仕事上話しかけて来る知らない人も嫌いだ
仕事のため話しかけても考え事をしているのかなかなか口もきけない人も苦手だが
マリラのような発言はできないが「そうさのう」と言える包容力?があるお爺さんにはなりたいものだ

仕事上話しかけて来るのは仕事だから仕方がないがとはいえ幼い子供じゃないんだからおじさん相手にうまい棒を数本差し出されても手に取ることはない
ノルマをこなして早く帰りたかったのだろう
藁にさえなれなくて済まないが知らない人から貰ううまい棒はいらない
ポケットティッシュとかならともかくうまい棒ってなんだよ
それが最近のトレンドか

配役
幼い頃に両親を失い孤児院からカスバート兄妹の元で育てられることになったおしゃべりで妄想好きなアン・シャーリーに山田栄子
カスバート兄妹の妹で料理が上手だが現実主義者でアンのおしゃべりに辛辣なマリラ・カスバートに北原文枝
カスバート兄妹の兄で農業と貯蓄の利子で生活している「そうさのう」が口癖で内向的なマシュウ・カスバートに槐柳二
ナレーションに羽佐間道夫
グリーンゲイブルズの近所に住むおしゃべりなおばさんでマリラとは古くから友人のレイチェル・リンド夫人に麻生美代子
男の子を欲しがったカスバート兄妹に対し手違いで女の子を連れてきたアレキサンダー・スペンサー夫人に坪井章子
最寄駅の駅長に塩見龍介
ホワイトサンドのスペンサー夫人の家に馬車で向かう途中で声をかける主婦に高村章子
スペンサー家にやってきてアンを子守として欲しがった意地悪そうなお婆さんのブルエット夫人に京田尚子
スペンサー家の娘でリリーを妹のように可愛がるフローラ・ジェーン・スペンサーに吉田理保子
スペンサー夫人が孤児院から引き取った幼い女の子のリリー・ジョーンズに貴家堂子

劇場版のエンドクレジットにはなぜかアンとカスバート兄妹とナレーター以外役名がない
リリーの声はたしかにタラちゃんの声
名字も名前も読めない人名ってなかなかない

野川新栄
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