「邦画はなぜ天を仰ぎ叫ぶのか…無難にまとめたが大げさな演技が残念」岳 ガク REXさんの映画レビュー(感想・評価)
邦画はなぜ天を仰ぎ叫ぶのか…無難にまとめたが大げさな演技が残念
何かと批判の対象になりがちな漫画原作の実写化の中で、バランスが良く無難にまとまった作品。
話の軸を新米救助隊員の久美ちゃんに置くことで、山岳救助隊の置かれた状況や救助の難しさや、直面する死に対しての恐怖や葛藤などがストンと伝わる。
漫画ではえげつない死体の描写も、きれいすぎず目を背けたくなるほどでもない。
超人・三歩の活躍の場も、無理にエベレストまで足を延ばさず、穂高だけに絞ったことで地に足着いた話になったとは思う。
だがなぁ…何で邦画って、どれもこれも悲しいとき天を仰いでわーわー叫ぶのかなぁ。
叫ぶのは悲鳴だけでいいのよ、うん。三歩の回顧場面で相棒が落下した時、「あーまたこれはくるよくるよ。上を向いて〈あー〉って叫ぶよ」と思ったもの。
あといい感じに演技してた子役。ジャングルジムで無理に泣かせなくても。僕、泣けます!って張り切ってみせると余計目に付いちゃうからね…毎回毎回製作委員会を立ち上げる日本の映画システムや、演劇や芝居だけを総合的に学べる大学がないことなどで(音大や芸大はあるのに)、演技指導がとってつけたものになってしまうのだろうか。
話は戻るけど、簡単なスノーハイクとセルフビレイくらいしかできない私でも、最後のダブルアックスの跳躍は「無いな~!」と思わずにはいられなかった。
クレパスの二人を視認もせず飛ぶなんてねぇ。二人が下におらずにまた位置がずれてたらどうするの?クレパスを平行して移動するなんて無理だよ?三歩、無駄死に。
おそらく絵的に、遭難者を背負った久美ちゃんの壮絶さの衝撃を狙ったものだろう。
しかしクレパスの中を確認する三歩の背中を映して跳躍させるなど、他にやりそうもあったのでは?
あんなマフラーの紐のきれっぱしで(しかも細すぎ)わかるもんかね。
この映画は「ミッション・インポッシブル」でも「ダイ・ハード」でもない。
ラストも足切断した人を無理に動かしちゃダメでしょ。なんで最後二人担いで無理に動いてるの。
稜線で二人横たわっててもいいじゃない。急に雑になっちゃった詰めの甘さが際立つ。