「主人公ハルがいけ好かない/ビジュアル面は秀逸」グリーン・ランタン 永賀だいす樹さんの映画レビュー(感想・評価)
主人公ハルがいけ好かない/ビジュアル面は秀逸
ハル・ジョーダンはテストパイロット。最新鋭戦闘機F-35に搭乗、無人戦闘機とのテストを依頼されるほどの腕前。
相棒は同じくらい優れた操縦技術を持ち、かつ企業経営者でもある美女キャロル・フェリス。
ところがハル自身は飛行試験に遅刻するし、試験で搭乗機を墜落させ、あまつさえ言い訳するという人物。
この時点でいけ好かない。
ところが宇宙の不条理は、彼を"なんでもビーム"を発する指輪を与えてしまう。
なんでもビームは意志の力でコントロールできるため、飛ぶことも、防御の盾を作ることも、銃器や鈍器を生み出すことも、自在にできてしまう。
まさに"なんでもアリ"なパワーを秘めているので、そこら辺のけち臭い暴漢が何人集まっても太刀打ちできない。
つまり人間的にダメなのに、社会的地位に恵まれ、美女もいて、おまけに無敵のヒーロー能力というのが本作の主人公。
『キック・アス』や『ウォンテッド』と正反対の流れ。
等身大の俺(=観客)ではなく、理想像の俺が縦横無尽に暴れまわるのが本作という仕立て。
ところでこのグリーン・ランタン。世界で唯一無二の存在ではない。
聞いてビックリ、全宇宙に3600人もいて、全宇宙の平和を守る超警察機構だったのだ。
そしてハルは死んだアビン・サーから指輪を受け継いだばかりの新米ランタン。指輪の力で本部に転送されたハルは、先輩ランタンからいいようにあしらわれる。
へへーん、ザマァミロ。
それにしてもハルの無責任ぶりはひどい。
ちょっとストレスを浴びただけで「俺、辞めるから」とはお気楽過ぎる。キャロルにたしなめられても「辞めるのは得意だから」と筋違いの清々しさ。
そういうことやってるから、最終決戦でも3600人のランタン仲間から総スカン食らうのは当たり前だ。
まぁ、生命の危機に直面する超ブラックな仕事だから、逃げ出したくなるのも分からないではないのだけど。
しかしだからって最終決戦直前になってニート気質を発揮されても、観客としては「バカか、オマエ」と言いたくなってしまう。
順序が違うのだよ、順序が。
とまぁ、主人公ハル・ジョーダンのメンタリティはかなりアレだけど、アメコミ映画としては優れている方だと思う。
ビジュアル面も申し分ないし、主人公と敵役との確執、美女キャロルとの恋愛など、映画作品としてのツボはきちんと押さえたストーリーになっている。
また3600人もいるグリーン・ランタンの多様性も、ビジュアル面では十二分に成功といえるだろう。作品の構造上、活躍の場面はとっても限られたものになったけれど。
一番のネックはハルの性格と成長過程。これだけはいただけない作りだ。
では評価。
キャスティング:5(主人公ハルのヘタレっぷりと名誉挽回ぶりはライアン・レノルズならでは)
ストーリー:4(構成のちぐはぐっぷりが目立つ)
映像・演出:8(なんでもビームの表現は見事)
ヒロイズム:3(ヒーローが「俺、辞める」は勘弁してほしい)
キャラクター造詣:9(多種多様の知的生命体をリアルに製作)
というわけで総合評価は50点満点中29点。
アメコミ映画の再現度としては高い。ビジュアルで観たい人にはオススメ。
一見すると"勝ち組"で、だけどメンタリティは"負け組"にいて、でも最後は自分に勝つという面倒くさい構造に我慢できる寛容さを持ち合わせている人にならオススメ。