劇場公開日 2010年9月11日

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「社会の不適格者とレッテルを貼られた女の反撃」ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0社会の不適格者とレッテルを貼られた女の反撃

2010年10月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

前作で重傷を負ったリスベット。だが、重要な被疑者でもある。
警察の監視下に置かれた彼女が、病室から一歩も出られず、どうやって得意のサイバー戦法に持ち込むのかが、興味をそそる最初のポイントだ。
やがて物語は、リスベットの回復を待って法廷ドラマに持ち込まれる。ここまでほとんど喋らなかったリスベットが公判に入ると持ち前の頭のキレを発揮、社会の不適格者とレッテルを貼られた女が一転して反撃に出る様変わりが見どころ。
いっぽうで、リスベットを無罪にすべく、ジャーナリストのミカエルが情報収集に奔走。彼の妹が弁護を引き受ける。さらに政府高官たちの売春を暴こうとするミレニアム編集部には脅迫のメールが届きはじめる。彼らは命を脅かされる恐怖のなか、無事、出版に漕ぎ着けられるのか? 前作で所在不明になった金髪の大男ニーダーマンの動きも気になる。
幾重にも同時進行する筋立てが、編集の妙もあり、緊迫した空気を生む。

法廷ドラマの体を取りながら、交錯する事件がやがて一本にまとまり、ひとつの点へと向かう。それは国家の暗部を暴くだけでなく、リスベットの過去が明かされることであり、これこそがこのシリーズ3部作を通じての主題だ。
これまで必要最小限の人間関係だけで生きてきたリスベットだったが、多くの人に支えられ助けられていることを知る。それでも最後まで“ありがとう”の一言が口に出せないリスベットが、逆に微笑ましい。

10ヶ月足らずで3部作全篇が観られたのがいい。人物相関が複雑なので間が開きすぎると頭がついていけなくなる。とくに2と3を一気観できたのがよかった。テンションを保ったまま最終話に突入できた。久しぶりに原作を読みたくなる映画だった。

アメリカ版のポスターが構図、色調ともにカッコいい。日本のポスターは2と3を統合してしまっている。

マスター@だんだん