「単純なミステリーではない底力を感じる重厚な仕上がり」ミレニアム2 火と戯れる女 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
単純なミステリーではない底力を感じる重厚な仕上がり
前作「ドラゴン・タトゥーの女」では、ミカエルを助けるリスベットだったが、今作では事件の当事者になる。
警察当局から追われるリスベットが、どう危機を乗り越えていくのか、見た目とは裏腹の頭脳のキレが、この作品でも主軸だ。小さな身体をいっぱいに使った行動力もリスベットの魅力。
いっぽうミカエルらは少女売春組織の実態を暴いていくが、そこに政府要人らの名前が次々と浮かび上がっていき、ここにミステリーの要素が加わる。
取材を阻止する殺人事件が起き、それを機にリスベットとミカエルがリンクする展開は巧い。リスベットの無実を信じるミカエルは、懸命に彼女の居場所を探すが、その課程でリスベットの過去が明かされていく多重構造となる。
さらに売春組織にザラという謎の男の名がちらつきはじめ、リスベットの過去とリンクしていく様は、このシリーズが単純なミステリーではない底力を感じる。
そして、なんといっても映画化の技術力の高さが目を引く。そう長くもない130分のなかで、多くの登場人物が描かれ、謎が丁寧に紐解かれていく。足を使った取材と、コンピュータを使った情報収集という、謎解きにアナログとデジタル双方の力を活かしたバランスがいいのだ。「ダ・ヴィンチ・コード」のように、推理する間もなくストーリーが進んでいく、観客不在の作りではない。決して駆け足にならず、登場人物も風格があり、重厚な仕上がりだ。
複雑な人物相関だが、主要人物が初めて登場する際、字幕で名前と肩書きが表示されるのは親切だ。難しい展開を少しでも理解しやすいようにとの配慮は、オフィシャル・サイトにも見て取れる。
今回、2を観ると、1は、富豪一族にまつわる猟奇事件を主軸にしながら、リスベットとミカエルの能力を描き、シリーズの主要な人物を脳に焼き付ける役目を持った大きなプロローグだったことが分かる。