「冷えた身体には、温泉が効くように、心に効く荻上ワールドの不思議体験を是非どうぞ!」トイレット Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
冷えた身体には、温泉が効くように、心に効く荻上ワールドの不思議体験を是非どうぞ!
『かもめ食堂』『めがね』など、独自の才能を放つ、荻上直子ワールドの初体験にショック!
単館系であれ程までに話題騒然となった『かもめ食堂』とは確かにおもろいのかも?期待は膨らんでいくばかりだ。しかしその気持ちは、丁度恐いもの見たさに似た感情で観た後で、もしもコケルと恐いので、失敗を避けて彼女の作品は、嫌いと言う事にして置いたので、今回の『トイレット』が初体験だ。別に本当に嫌いと言うのでなく、つまり食べず嫌いを貫いてきたわけだ。
たかが映画1本を観る、観ないで何故これ程大袈裟に?と自分でも、いぶかしげに思う事が有るのだが、時間と言う自分の人生の1部を映画に切り売り?否、捧げる生活の私?には、映画を観た後のあの後味の良さ、悪さで自分の人生の質が少し変化するようで、映画一つの選択も決して侮れないのだ!たかが映画、されど映画なのだ!!!
当然劇場では、毎月の小遣いから大金を払って観る映画として、荻上監督作品が自分の感性にピタリしないのでは、しゃくに触るので、DVDレンタル待ちでと言う事になる。
今回も、真に変なタイトルの『トイレット』ならば、きっと自分の好みと相性が悪かったとしても、これは題名が示すように、映画を観たその記憶そのものをトイレに流して忘れてしまうのだ!と清水の舞台にたったつもりでレンタルする。
ネクラなロボットプラオタクのレイ、引きこもりで本当のお宅から抜け出せないピアニストのモーリー、そしてちょっと覚めた目で世の中を見て図太く生きている様で、その実とっても、繊細なリサ。こんな家族なんて絶対あり得ねえ!
しかもこの兄妹の母親が、死の直前に望んだ事は、ペットの猫を抱きあげ、臭いを嗅ぐ事なんて!!!もうまったく!!!許せねえ!!!何言ってんの、これ!!!
しかし、こんな異様なタイプのコメディー映画観た事無い!!!映像も、音楽も、編集も特別に、力を入れたこだわりを持っているようには、見受けられないし、特別高い芸術的香りを放つセンスも感じられない。
それでも、この有り得ないようなバカな人物設定、3兄妹+ばあちゃんだけ、しかもこのばあちゃん喋りもせずに、表情も変えるでもなければ、一体何者?と???の連続なのだが、それでいて、どんどん物語の中へと引き込まれていってしまう。誠に不思議な世界感であった。
ひきこもり、差別、血縁、言語、これらは人にどう影響するのか?家族との絆や、人との繋がりに本当に必要なものとは? 自信を持って生きるためには、どうするのか?
目では、決して見る事が出来ない、愛情とは一体どんなもの?
そんな人が人として、人生を歩んで行くための原動力として必要なものが何かをそって語ってくれる。時に真正面から切り込むと、重くなるシリアスな問題も、こうしてオブラートに包んで大切に優しい目線で表現すれば、やんわり、じんわりと温泉に入り身体が少しずつ温まる様に心も温まり、理解を得ると言う摩訶不思議な世界だった!!!
バス停の椅子に腰かけるばあちゃんは、フォレストガンプそのものだった、そこには人生の総てを見守っている何者かが、きっとこの世界のどこかに存在しているように思えた。