「竹山のキャラクターは、ついつい応援したくなる」ねこタクシー 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
竹山のキャラクターは、ついつい応援したくなる
主演がカンニング竹山。映画の中では描かれ無いが、人間関係が苦手な為に、過去に教師として挫折した経験が有る人物。娘の山下リオちゃんとは、まともに話すらして貰えず、しっかり者の妻役鶴田真由にも、見下されている毎日。
今はタクシー運転手として地道に働いてはいるものの、営業成績は最低で会社からは常にはっぱを掛けられている男。
そんなダメダメ男なのに、何故これ程の美人の奥さんをゲット出来たのか…実に不思議だ(笑)
ネコババア婆さん室井滋の家に居た《御子神さん》を引き取って車に乗せてから、それまでの無気力な人生が変わった。
いつもオドオドしながら日々生きている竹山のキャラクターがかなり良い。何だかつい応援したくなるキャラクターでした。
…いやいや!決して普段の自分を見る思い…じゃ無いっすから!
映画は竹山と正反対の人物として、女性タクシー運転手の芦名星を用意。男に負けたく無いキャラクターとして、嫌みな人格の持ち主となっている。それでも映画の後半には、ちょっとした本音を竹山に漏らす。
もう1人重要な人物として登場するのが、刑事役の内藤剛志。
営利目的の為に動物を利用する是非を、竹山を通して観客にも訴えかける。道徳的な見地からみても確かに頷ける人物像で、ドキュメンタリー映画の『犬と猫と人間と』を観た時に得られた、ペット文化に対する一石を投じる様な人物設定でした。終盤で母親から語られる幼い頃のエピソードが実に微笑まし。
自分の為では無く、たった1匹の年老いた老猫の為だけに、必死になる姿に絆される内容は、知らずに乗り込んだ事で、御子神さんに日々の疲れを癒された乗客同様に。映画を観た我々観客も、日常の嫌な事を忘れさせてくれる作品でした。 途中で盲導犬と一緒に乗り込む女性のエピソードも、色々と考えさせてくれて、なかなか良かったですね。
何事にも動じない御子神さんと、怖がりでいつもオドオドしているコムギの2匹もとても可愛いかったのですが、ちょっと気になったのは、最後にあの様な終わり方になった事。
竹山のキャラクター設定からして、どう考えても巧く立ち向かって行けるとは、どう見ても思えないのですが…。
ストーリー上に於いてはよく理解出来るのですが、キャラクター設定を考えると果たしてどうだったのでしょう?せめて、キャラクターの性格自体を若干変えていたら…と、ついつい考えてしまいました。
(2010年6月13日シネマスクエアとうきゅう)