「高倉健といえば「不器用ですから」だけど俳優だからわりと器用」幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)
高倉健といえば「不器用ですから」だけど俳優だからわりと器用
これは何度も鑑賞
山田洋次監督の最も優れた代表作
監督と脚本は『男はつらいよ』シリーズ『学校』シリーズ『家族はつらいよ』シリーズ『ダウンタウン・ヒーローズ』『たそがれ清兵衛』『隠し剣鬼の爪』『武士の一分』『小さいおうち』『キネマの神様』の山田洋次
脚本は他に山田洋次監督を師事し共に『男はつらいよ』シリーズや『釣りバカ日誌』シリーズにも携わった朝間義隆
第一回日本アカデミー賞作品賞の他数々の賞を獲得した日本を代表する名作映画
北海道で出会った3人によるロードムービー
恋人にふられたショックで仕事を辞め退職金で赤いファミリアを買い北海道への旅を始めた欽也
東京から釧路までフェリーに乗り釧路から網走にやってきた欽也はナンパをしまくりやはり傷心旅行で東京から北海道にやってきた朱美と出会う
欽也と朱美に加え勇作も同行することになり3人の旅が始まる
網走から帯広そして札幌行きを変更し夕張
殺人罪で刑期を終え出所した勇作は迷惑をかけた妻と別れていた
勇作は出所した日に夕張に住む妻に手紙を送った
「今も独身で自分を待ってくれるなら前に住んでいた人が立てた鯉のぼりの竿に黄色いハンカチをさげてほしい」
あえて食事を抜いて演技にのぞみ網走の食堂でビールを注文し両手で飲み干す高倉健の芝居は名シーン
ただ40代半ばで醤油ラーメンとカツ丼は頼み過ぎだと思う
僕は最近試したが食べ過ぎで具合悪くなった
欽也はよくこける印象
演技経験無しで挑んだ武田はこけかたがうまいが山田監督にかなりしごかれたそうだ
山田が誘わなければ金八も101回目も無かったかもしれないと思うと感慨深い
カニを食べるシーンでアドリブかましてそれがスタッフにウケて有頂天になった武田
それを面白くない桃井は「私は真面目にやっているのにウケるのはあんたばっかり油断できないわ」などと因縁をつけ2人が喧嘩するエピソード大好き
その怒りが収まらず朱美がファミリアの運転操作ミスを度々してしまい欽也が叱るシーンで「今日の君はずいぶんいいね」と武田が監督に褒められるエピソードも好き
それにしても普通俳優初挑戦の若い歌手に若手女優が喧嘩を売ったりするだろうか
南田洋子が『太陽の季節』で恋人役の当時大部屋俳優だった長門裕之を楽屋にわざわざ呼び出し「あんたミスキャストね」と言い放つわけだから昔は割とよくあることだったのかもしれない
今はどうだかわからない
酒も煙草もバンバンやるし自宅は全裸だとかそういうカミングアウトはするけど
先輩の女性俳優が駆け出しの男性俳優にガツンとかますことは今でも多少あるかもしれない
最後の黄色いハンカチがたくさん下げられているシーンはあまりにも有名だがそれに関する武田のエピソードも大好き
なかなか晴れずに撮影ができず近所の家に上がり込んで桃井と一緒にどんちゃん騒ぎをしていたってやつ
高倉健は真面目だから朝から夕方まですぐに演技ができるよう現場でずっと立っているというのに
新人だから本番でなかなか涙を流さず武田が困っていたら高倉健が別れの挨拶してくれてそれに感動して泣けることができたって話
高倉健って気配りの天才なんだよな
無口なイメージだけど若手に積極的に声をかけて演技しやすいように配慮してくれるらしい
全く惜しい人を亡くしたよ
それにしてもこんな40代半ばいまどきいないよ
自分の周りはもちろんのこと芸能界でも
なんか高倉健に比べると随分と軽い感じがする
昔の人って老けていたな
阪急のサードでヒゲにサングラスの人いたけどありゃ20代には見えないよな
たこ八郎演じるヤクザもんにキレる瞬間が一番かっこよかった高倉健
あと武田はそののち演技がどんどん上手くなっていくけど桃井は全然変わらないな
デビュー当時から完成されていたんだろう
技術云々じゃなくてそれが彼女の味ってもんだろう
あえて苦言を呈するならラストの武田と桃井のキスシーンはいらない
2人が手を握り合うだけでいいじゃない
桃井はともかく武田のキスシーンは画的に汚い
短めのオープニングクレジットでエンドクレジット無し
いい時代だ
配役
刑期を終え出所してきた元炭鉱夫の島勇作に高倉健
勇作の妻の島光枝に倍賞千恵子
失恋を癒すため東京から北海道旅行にやって来た小川朱美に桃井かおり
失恋を癒すため東京から北海道旅行にやって来た花田欽也に武田鉄矢
旅館の親父に太宰久雄
勇作との喧嘩の末に殺されるチンピラに赤塚真人
警官に梅津栄
警察署で泣く女に三崎千恵子
帯広のヤクザにたこ八郎
警官の渡辺勝次に渥美清