劇場公開日 2010年7月3日

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ザ・コーヴ : 映画評論・批評

2010年6月29日更新

2010年7月3日よりシアター・イメージフォーラムほかにてロードショー

編集という技術の怖さを見せつけるドキュメンタリー

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導入部は、以前話題になったフェイク・ドキュメンタリーの低予算映画「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」のように、恐怖映画のタッチを模している。

この場面に(後で)かぶせた音声で監督は、本作の中心人物であるイルカ保護活動家リック・オバリーが「パラノイド(偏執的)」と最初は感じたと言っている。もちろん、監督はイルカ漁のあり方がオバリーの話を超えるものであるという方向で画面を作ってゆくことになる。

この作品で見るべきは、編集という技術の怖さだ。この編集技術のレベルは相当なものだと思う。

ドキュメンタリーと呼ばれる映画も劇映画と同様、音も含め編集によって徹底的に作り込まれるものだ。素朴な「事実」などそこにはない。「苦しむイルカ」のショットの次に出演者の 「涙」のショットを置く。それでひとつのメッセージになる。

オバリーの話の巧さ(相当な役者だ)、相当な手間と予算をかけた隠し撮りの躁的なノリ。善良さ、謙虚さという名の傲慢さを感じるが、それを露呈させるのも映画だ。どのように断片的なショットを組み立てて、強いメッセージを成立させるか、その技術の見本として、この作品は多いに有効だろう。

大久保賢一

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