「やっぱりフカキョンは悪女に限らぁ〜」夜明けの街で 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
やっぱりフカキョンは悪女に限らぁ〜
もともとフカキョンは悪女が似合うと思っていたが、今作では、生真面目な岸谷を誘惑し、引きずり込む不倫蟻地獄を形成。
純情無垢なフリして用意周到にトラップを仕掛けていく。
小悪魔通り越して、悪魔の毒牙を存分に剥き出しており、悪女フカキョンを堪能できた。
しかし、それ以外は地獄そのものでハッキリ云って眠い。
サスペンスとしても、官能映画としてもである。
遥か年下の相手に翻弄されるラブサスペンスでは、今年観た『クロエ』や性別の設定は違えどダイアン・レインの『運命の女』etc.のハリウッド作品を傑作の査定基準にしている私にとって、今作の濡れ場はひたすらおとなしく、もどかしい。
別に濡れ場なんやから裸をもっと出せと云っているワケではない。
露骨な不倫なのに純愛路線を敷こうとする了見に憤りを感じたのだ。
第一、同じ社の課内でPCメールをやり取りしてお互いに秘めた愛を育む世界観はいくらなんでもタッチが古い。
故に、恋愛よりサスペンスに好奇心を向けてみるのは当然の成り行きである。
フカキョン宅で起きた未解決の殺人事件の真相が核となっているのだが、謎解きのテーマが犯人云々ではなく時効に焦点を絞っている時点で、再び話の古臭さに顔をしかめた。
2011年現在、殺人事件に時効は執行されなくなったからである。
タネ明かしも単調で冷める。
むしろ、2人の関係に気づかない振りして、最後にジェラシーが爆発する妻の木村多江の佇まいの方がミステリアスであり、セクシーであり、そして凄まじく恐ろしい。
フカキョンよりも全てにおいて一本上手である彼女の心中をもっとクローズアップして欲しかったかな。
どちらにせよ、まんまと罠にハマる男のアホさは変わりゃあしないのが哀しいところで、
最後に短歌を一首。
『赦されぬ 波に抱かれて 刻む嘘 溺れて気づく 罰の重なり』
by全竜