「エスプリは、凄く効いているものの、展開がユニークすぎて、少々ドタバタするので、その辺が好みを分けることでしょう。」ミックマック 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
エスプリは、凄く効いているものの、展開がユニークすぎて、少々ドタバタするので、その辺が好みを分けることでしょう。
凄くユーモラスでありながら、なおかつ『死の商人』への復讐劇を通じて、世界平和を暗に呼びかけるフランス映画らしい社会派の一面も見せています。
チャップリンを思わせるようなエスプリは、凄く効いているものの、展開がユニークすぎて、少々ドタバタするので、その辺が好みを分けることでしょう。
そもそもの復讐劇の始まりは、主人公バジルが犯罪のまき添えになり、頭にピストルの弾が残ったままの状態になったことでした。
それともう一つ、バジルの父がアフリカ出征中に、地雷処理を誤り、自爆死したことでそれぞれの武器を製造した武器メーカーに復讐しようと思いついたのです。
恨まれた武器メーカーとしては、飛んだ迷惑。なにしろ直接バジルに危害を加えたわけではなかったのです。
そんなバジルの復讐にとことん付き合う、心優しき仲間となるのが、ガラクタ修理屋プラカールとスタッフたち。単なる修理屋でなく、ここのスタッフはみんな一芸に秀でる技有りの人たちであったのです。
何と言ってもバジルは、いたずらのアイディアの宝庫。彼にかかれば、特攻Aチームのハンニバルですら脱帽するでしょう。そして、バジルのいい仲となるカウチュは、ものすごい軟体女。劇中でもアクロバットな体躯の折曲がる姿を披露して、どこにでも忍び込む妙技を見せつけます。ピエールは発明家。ガラクタをかき集めて、精巧なからくりを作り上げて、バジルの作戦をサポートします。その中には、人間大砲まで。そんな人間大砲の実験台となるのが、フラカス。彼は若い頃に人間大砲に挑戦して、ギネスブックに認定されたスペシャリストでした。レミントンは言語オタクで、ことわざの知識が意外と役に立つ場面がありました。カルキュレットは、人間計算機。人間大砲の発射角などたちどころに目測で計算するほか、チームの作戦を冷静に管理しています。
そしてチームをボス格が、修理屋の代表プラカール。何十年もと獄中生活を送り、2度までもギロチン刑を執行されながら、生還し恩赦をうけた、悪運の強いヤツなんです。
彼らは、正義漢と仲間意識だけで、バジルの復讐に一致団結します。そんなチームワークの良さを見ていると、なんだかハートウォームになれました。
そんなユニークな面々がチームを組んで、狙うは地雷メーカーのヴィジランテ社長マルコニーニとその取引先の元独裁者の密使トリオたち。それとピストル製造元のオーベルヴィリ社社長のフヌイエ。クーデターに必要な武器取引の情報を掴んだバジルたちは、その取引を餌にしてフヌイエを巻き込み、いたずらを仕込んでマルコニーニと対決させ、つぶし合わせる計画を巧みに実行していきます。
その過程は、痛快そのもので、ちょいとしたスパイ映画を見るようでした。
ラストの復讐を完結するところは、なかなかの思わせぶりな展開。トップ2名をまんまとアフリカのゲリラに引き渡して、始末することを任せたと思いきや、トンデモないドンデン返しが待ち受けていました。
さて、兵器工場が大爆発するところがあるなど大勢の人間が犠牲になってもおかしくない設定でしたが、本作ではほとんどの人が死なないところが特徴です。本作が、スパイアクションでなく、あくまでハートフルな人間ドラマとして描かれているこだわりの一つとして、殺伐とした人殺しのシーンをさけていて、全編がジョークの塊のような作品に仕上がっているところが特徴ですね。
ちょっとアナーキーなところが気になるところではありましたが。