「稀代の色男の恋路とは?」ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い しむしむさんの映画レビュー(感想・評価)
稀代の色男の恋路とは?
物語の時代背景などの説明は無いのである程度の予習をしてから観た方がより楽しめると思いますが、必須では無いので、「ドン・ジョバンニ」の成り立ちに興味があればそれなりに楽しめます。
また、当時の衣装や舞台稽古の様子など興味深いものも多かったですし、本物のオペラ歌手を使っているだけのコトはあり、その歌声の迫力はナカナカのモノです。
作品中に流れてくる数々のクラシックの名曲や、モーツァルトの調べに身を任せるのも良いですね。
ダ・ボンテの放蕩生活ブリや、カサノヴァとの関係性。その人物像など描き込みが足りないと感じる部分があり、ダ・ボンテがそれ程の放蕩者と思えないのはどうなのかなぁ~と・・・
健気に見えれしまうのは何故でしょう(良く考えれば同情する余地は一切無いように思えます(笑))。
ダ・ボンテとアンネッタ、フェラレーゼの三角関係を描きつつ、
「ドン・ジョバンニ」の製作過程や稽古中の劇中劇とシンクロしている点が、複雑且つ幻想的な世界観を創りだすことに一役買っています。
其の時々のダ・ボンテの心情をシンボリックに描き出している点が印象的でした。
その他では絵画的な画作りの中に、登場人物が投影されると ―
画が動き出し、ストーリーが進んでいくといった演出手法も幻想的で芸術的な雰囲気を出すのに大きく貢献しているのかなと思いました。
当時のオペラの製作過程に興味のある貴方。
「ドン・ジョバンニ」やオペラお好きな貴方。
モーツァルトやダ・ボンテに興味のある貴方。
先駆者の苦悩を知りたい貴方。
男女の三角関係など、お昼のメロドラマがお好きな貴方。
お勧めです。
初恋の人、アンネッタへのダ・ボンテの想いの強さ。
その想いを成就される為には何としても、「ドン・ジョバンニ」を完成させ、過去の自分と決別し新しい自分への再生が必要。
さらには、アンネッタへの贖罪の意味も込めた、言わばダ・ボンテの告白なのでしょう。
「ドン・ジョバンニ」の稽古に参加し楽曲に触れることで、周囲の噂や、雑音に惑わされずダ・ボンテの想いを感じ取ったアンネッタは、遂にダ・ボンテの元に駆け寄るのです。
カサノヴァの望んだ結末とは違い、アンネッタを選び真実の愛を叫ぶ決意をしたダ・ボンテは「ドン・ジョバンニ」を完成させることで、古い価値観や宗教的な倫理観、道徳観からの開放、魂の自由を訴え、カサノヴァからの呪縛からの自由、独立をな成し得たのです。(父の呪縛から逃れられなかった、モーツァルトとの違いは此処なのかも知れませんね)
「ドン・ジョバンニ」は、余りに先進的過ぎたので、周囲には受け入れられませんでしたが、満足気なダ・ボンテとモーツァルト。
理解しあう、天才二人は、傑作と確信したのでしょう。
何時の時代も先駆者は理解されないモノですネ。