「SFコメデイで笑うのは楽しい」メン・イン・ブラック3 DOGLOVER AKIKOさんの映画レビュー(感想・評価)
SFコメデイで笑うのは楽しい
製作総指揮:スピルバーグ
ストーリーは
地球に生息するエイリアンを監視する極秘組織「MIB」のエージェント捜査官「J」と「K」の活躍するサイエンスフィクションコメデイー。
良いエイリアンは、地球の人と協調して生活しているが、とんでもなく悪いエイリアンも居る。それを取り締まる「J」と「K」は、長い間組んできた相棒同士。二人そろってブラックスーツにサングラス、口数少ない「K」は、のべつ幕なしにしゃべっている口数の多い「J」に全幅の信頼を寄せている。
ある日「J」が目が覚めてみると「K」が居ない。「MIB」の署長は、「K」は40年前にエイリアンに殺されたと言う。時に、凶悪犯片腕のモンスターが脱獄して、宿敵「K」を殺そうと狙っていた。「J」は、過去に遡って「K」の命を救わなければならない。「K」がいなければ、40年後の今の自分はないことになる。「K」に生きてもらわなければ。かくして、「J」はタイムマシンに乗って 1970年代に戻って、「K」を取り戻す。人類の夢である月へのアポロの打ち上げが、カウントダウンされていた。エイリアンは、人類の夢アポロに、、、。というお話。
SFだから「MIB」のオフィスが、超近代的で3Dで映像をみせるコンピューターを駆使して捜査官たちが立ち働くマシンの数々に目を瞠る。こんなマシンがあったら、いいな と思うような 着想の良さ。 また、おもしろいのは びっくりするような姿や形のエイリアンが 当然のように地球人と一緒にオフィスで働いていたり、街を歩いていること。普通の人には、それがわからない。見える人にしか、見えないのだ。結構 有名な芸能人が実はエイリアンだった、などの「おふざけ」も、普通に画面に出てくる。下半身が魚だったり、頭が体より大きかったり、腕の中に飛び道具を備えたエイリアンがいたり、「ちょい悪」もいれば、徹底して極悪なエイリアンもいる。中国街では、カンフー使いの中華風エイリアンが牛耳って違法行為を働いている などなど、とても笑える。
「J」が40年前にタイムスリップしてみると、1970年代はまだ アフリカ系アメリカ人への差別が強い時代。黒い人はエレベーターに入ってきただけで 嫌な顔をする人が多い時代だ。「J」が話しかけても 返事もしない人が多いのに、まったく構わず誰彼と無く平気で、ラップな感じで話しかけ ジョークを飛ばす「J」の姿が、またまたおかしい。差別社会の冷たい反応に反応しないことで、現在の地位を勝ち取ってきた 差別される側の対応をサラリと、見せてくれる。エデイ マフィが、一分間に5つも6つも、立て続けのジョークを言って、差別白人から苦笑、そして、ついに本物の笑いを勝ち取ってきたように。ウィル スミスは、独特のスマートな態度で、差別白人との間隙を埋める。なかなか、芸が細かい。
現在66歳のトミー リージョンズが40年前の役を 42歳のジョシュ ブローリンが演じている。本当は26歳の設定なのだけれど、40年前も今も「K」は地味で老けていた。ジョシュ ブローリンは 若いころのトミー リージョンズにそっくりに変身していておかしい。それだけでも笑える。
トミーリージョンズは、年をとってさらに渋くなった。ハーバート大学卒、学生時代はフットボールの花形選手だった。クリントン元大統領のもと、副大統領だったアル ゴアと同級生で親友、今も交流があるという。アル ゴアは、クリントンのあと大統領候補として選挙戦を闘いジョージ ブッシュに敗れて政界を去り、環境保全、自然保護運動でフイルム「不都合な真実」を作って アカデミー賞を受賞した。
トミー リージョンズは「逃亡者」でジェラード警部役でアカデミー男優助演賞を取り、「ノーカントリー」では、偏執狂の殺人者が狂いまくる画面のなかで、ひとりだけ人間味のある刑事の役を演じていた。とても良い役者だ。その彼が今回の映画では余り出てこなくて、彼の代わりに、若いころの彼をブローニンが渋く決めている。
ウィル スミスはスマートだが口数の多い、動きの大きい、ひょうきんなエージェント。どうして自分がベテラン捜査官「K」の相棒に抜擢されたのかわからなくて、ずっと疑問に思ってきた。その二人の結びつきの以外な契機が 今回の映画で明らかにされる。ふむむ、そうだったのか。だから、「K」は「J」をピックアップしたのだったのか、という訳。ホロリとさせられる。
細かいデテイルを見ていると 笑えるところはいくらもある。テンポが速いので、気がつかないで見逃した笑いも沢山あると思う。楽しい映画。同じ笑うなら 現実社会のドタバタを笑うより、SFのコメデイで笑うほうが楽しい。
でも、テーマソングくらい、タミー エルフマンに歌わせないで、ウィル スミスに歌わせればいいのに、と思ったのは私だけではないのではないかしら。