「惜しむべきところは、ヴァンパイア&ライカンに人間界が関与するという本作の新機軸が、後半崩れてしまうこと」アンダーワールド 覚醒 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
惜しむべきところは、ヴァンパイア&ライカンに人間界が関与するという本作の新機軸が、後半崩れてしまうこと
本当は『シャーロック・ホームズ』を見にいくつもりでしたが、時間に遅れてやむなく見ることにしたのが本作です。
シリーズ4作目にして、予習なく初めて見たために、吸血鬼(ヴァパイア)と狼男(ライカン)の2つの種族に分かれて抗争しあう本作の世界観が全く理解できず途方に暮れました。やはりシリーズものは予習が大切ですね。
4作目の今回は、前3作で抗争を続けてきたヴァンパイア&ライカンの関係に分け入って、双方を殲滅せんとする人間が新たに戦いに加わることです。その人間界のウィルス研究機関として、登場するのがアンティジェンという会社。アンティジェン社は、主人公の女ライカンハンターであるセリーンを恋人のマイケルと共に捕獲して、「被検体」として実験台にしていました。だけど、超常的な力が作用して、セリーンは覚醒し逃走するというもの。その時みせる派手なアクションを見ると、何から何まで『バイオハザード』に似ているなと思いました。
『バイオハザード』には、どんどんあり得ないほどのスーパーウーマンに変わっていくアリスに違和感を感じて、もう無理な設定の続編はいらないのではないかと思っています。そこへいくと本作は、主人公が人間ではないので、どんなに超常的なアクションでも違和感なく見られるのがいいと思います。
また、本作品のルーツを辿れば、吸血鬼と狼男が恋仲になったことが、二つの部族の対立の原因とされていることは「トワイライト」シリーズに凄く近いストーリーです。どうもこのシリーズは他の人気シリーズのいいとこ取りをして延命を図っているような気がします。
ただ『バイオハザード』に比べてアクションシーンは、凄く良くできていて、嘘くさくありません。最近の『バイオハザード』ときたら、CGバレバレのシーンが多く、興ざめしていました。それに比べて本作で登場する狼男は、CGばかりでなく着ぐるみも使っていてであり、特撮とワイヤーアクションを巧みに組み合わせてアクションのリアルティを高めているのです。
ラストのセリーンとライカンのボスキャラとの対決シーンは、なかなか見応えがありました。よりリアルなクリーチャーを見せたいという製作者の思いは多いに評価したいと思います。
惜しむべきところは、ヴァンパイア&ライカンに人間界が関与するという本作の新機軸が、後半崩れてしまうことです。アンティジェン社は、ライカン族の隠れ蓑の会社に過ぎないことがネタバレしまうと、人間の活躍は薄れてしまい、元のヴァンパイア&ライカンに戻ってしまいます。それでは本作の新機軸が意味なくなってしまうではありませんか。
ところで、ラストで突如現れた娘に戸惑いながらも、セリーンはだんだんと母性に目覚めていくところが意外な展開。実験台にされていた間に無意識に生んでいた子供なのだから仕方ないのです。それを徐々に気付かせていくセリーンの変化を上手く捉えていると思えました。 まぁ、88分と短い上映作品と結局、恋人のマイケルが再開できず持ち越しになるのは、はなから続編ありきのストーリーなんですね。だから本作を初めて見る人には、シリーズをずっと見づけているファン向けの作品であると忠告しておきます。