劇場公開日 2011年1月15日

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「映画としての醍醐味は!?」ソーシャル・ネットワーク カオナシさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0映画としての醍醐味は!?

2011年3月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

前評判が高く、期待して見たが、なんでしょうねえという感じ。
決して飽きはしないが、可もなく不可もない。なんとも感興が薄いのは残念だ。
ひょっとしたら、主人公のマシンガン・トークを字数的に翻訳できない恨みがそんな印象を抱かせるのかもしれず(字幕の松浦美奈さんは大変優秀な方だと思うが、いかんせん、主人公の喋りが早すぎる!)、DVDで吹き替えで見たら、評価が一変してしまう可能性はあるが、劇場で見た感想は上記のとおり。

現代のアンチ・ヒーロー像というのであれば、空恐ろしいほどの孤独と巨万の富をもっと突き詰めて(割り切れなさを探求して)描いてほしかった。後半、唯一の親友を上辺ばかりにかばい、新たなパートナーと距離を置く展開はいいが、「それもあなたの仕業なのかもね」と若い弁護士に言わせるだけでは食い足りない。主人公の冷淡さを、あくなき強さとして描くところは新味かもしれないが、実際の人物がどんな印象をメディアに振りまこうとも、弱さも含め、より普遍的に人物造型して描くのが、映画の醍醐味ではないか。高評価する人は、冒頭に登場する女性との挿話に、こうした部分はうまく反映されていると見るのかもしれないが、ぼくにはいまひとつパンチ不足のような気がした(人間性の欠落を表現するにしては会話に頼りすぎ。身体の動きで見せたほうが迫力が出たかも。キャラクターの強烈な魅力も伝わってこなかった)。

『ゾディアック』で映画作家としての才能を全面的に開花させ、得体の知れない恐怖を描ききったデイヴィッド・フィンチャーだが、今回は脚本どおりのことをこなすのに手一杯。存命中の人物を描くのは労苦がつきものとはいえ、この監督ならではの力業(『市民ケーン』ばりのものをやる大志は持っているはずだ)は、あまり感じられなかった。

カオナシ