「現代的センスで彩られたリメイク」ベスト・キッド マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
現代的センスで彩られたリメイク
学校でイジメにあった少年が、見掛けは冴えないが抜群な技量を持つ師に出会い、血と汗に滲む稽古を重ねて、いじめっ子をやっつけるという話は84年版を踏襲したごくオーソドックスなものだ。だが、アメリカの自動車産業の衰退に伴う母親の再就職。その新天地に選ばれたのが、近年、経済成長が目覚ましく、また軍事的にも大国になりつつある中国という背景が時代を反映している。
主人公の少年・ドレ役、ジェイデン・スミスがうまい。動きもいいが、表情が達者だ。両親が俳優という環境からいっても小生意気になりそうだが、将来が楽しみな逸材であることに変わりはない。最近、演技派ぶったところが鼻につく父・ウィル・スミスより、この息子の方が注目株だ。
いじめっ子の悪童チョンを演じたワン・ツェンウェイもいい。観ていて、ホントに憎たらしい。そして、いかにも強そうだ。
カンフー教室の指導者リー(ユー・ロングァン)があり得ないほど残忍なのと、「ロッキー」かと思えるほどアメリカ的なショー・スタイルの試合会場には苦笑するが、この作品、決して子供向きではない。話は単純だが、少年ドレとジャッキー・チェン扮するハンが心を通わすまでの過程に重点を置き、ハンによる精神論を込めた指導や、彼の暗い過去にまつわるエピソードの挿入など、中国ロケを存分に使った展開は大人の鑑賞に堪えうる。ある意味、ジャッキー・チェンの集大成ともいえる出来映えで、2時間を軽く超える上映時間からいっても、安易に小さな子供を連れて行くと欠伸をしかねない。だいたい、ガール・フレンドのメイに抜擢されたハン・ウェンウェンの将来性は、可愛いとか可愛くないで判断するお子ちゃまには分かるまい。
84年版は誰もが知るヒット作だが、カラテをカンフーに置き換えたこのリメイク版も現代的センスで彩られていて面白い。製作サイドも力が入っていて、音楽はジェームズ・ホーナー。
残念なのは、日本語吹替え版しか上映していない映画館が多いこと。この作品、英語と中国語という言葉の壁がけっこう重要なポイントなのだ。