劇場公開日 2010年6月19日

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「子供向け甘口カレーライス」ダブル・ミッション いおりさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0子供向け甘口カレーライス

2010年6月15日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

楽しい

単純

ジャッキー・チェンの30周年記念作品である本作
大作ではなく意外にも軽快なホームコメディだ

自転車や冷蔵庫など日用品を使ったアクション
重厚で派手な映画が多い最近にしてはライトだが
過去作品をオマージュしたジャッキーらしさが満載
豪快なアクションを期待するとスカされるが
暴力やグロなく「ホームアローン」 のようなユルい雰囲気なので
ファミリー向けにお勧めしたい逸品だ

しかしながら作りは単純でシンプル
わかりやすい分だけ刺激が足りない
同じ単純でもアイアンマンの突き抜けた爽快さには及ばず
例えるならば、スパイシーさの足りない甘口カレーライスのようだった

ジャッキーが扮するボブ・ホウはしがないセールスマン
そんな彼の裏の顔はCIAの敏腕スパイ
隣人のシングルマザー、ジリアンと付き合っているが
その三人の子供たちはなかなか懐かない

ある日彼ら三人の面倒を見ることになったボブだが
長男イアンが極秘情報をダウンロードすることで
スパイの戦いにジリアンの家族もろとも巻き込まれていく

カッコ悪い隣のオッサンが、実はスパイで活躍を見せる
当初は完全にバカにしていたジリアンの子供たち
その見る目がどんどん変わっていき
彼らはボブに父性愛のようなものを感じ認めていくのは爽快だ

一生懸命日々働けどなかなか尊敬に至らない
ナマイキでウソつきな子供たち
彼らが徐々にボブを尊敬してくのは見ていて気持ちがいい
世のお父さんにはちょっと憧れる展開だろう

そして日常に有る道具を使った
ジャッキーらしいアクションも健在だ
過去作品のオマージュも散りばめ、テンポ良く畳み掛ける
相変わらずのコミカルさを持ったジャッキーの真骨頂だ
中でも自転車を使った戦闘シーンはスピーディーで見ごたえ有り

ただその反面、ややアクションのスケールに小ささもあった
ここ最近の派手で豪快な映像に慣れてしまったせいかと思う

また、ちょっと泥臭いコテコテなセンスには
邦題タイトルの「ダブル・ミッション」より
原題の「THE SPY NEXT DOOR」(隣のスパイ)の方がしっくり

更についでに言うと、字幕も合わなかった
たとえばスパイが情報員と訳され、どうにも雰囲気が出ない
情報員なんて言い方は通常しないし
スパイの方がいい感じに胡散臭く、作品に有っていると思う

子供が絡む作品であり、正直、気になる部分も少なくない
アクションも話もややこじんまりとしていると思う。
判りやすいのだが、お話は幼稚であっさりサッパリ
大人向けには、もうちょっと深みが欲しいところだ

そのため、見所は軽妙なアクション一つになってしまい
それ以外の場面ではちょっと間延びしてしまった感がある
意外性やどんでん返しでも挟んで一癖つけて欲しかった
まあ、ファミリー向けのライトコメディと割りきるのがいいだろう

いっそのこと、どうせならリュック・ベッソン作品のように
例えば「96時間」みたいにジャッキーを大胆に暴れさせたら爽快だった
あの手のアクションとジャッキーのコラボはなかなか興味あるのだが

ジャッキーのアクションはやはりカンフーあってのもの
永きファンとしてはやはりコミカルなだけではなく
強く豪快なジャッキーを見たいのだ
次回公開作はリメイク版 「ベストキッド」 のカンフー達人役
大人向けジャッキーがどう演じてくれるか、を大いに期待したい

いおり