「ヴァンパイア映画の常識を覆す!」デイブレイカー kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ヴァンパイア映画の常識を覆す!
人間が人口の5%を切ったために人血が不足し、代用血液の開発が急がれているという世界観。繁殖させるという方法はないのか?と、ヴァンパイア側に立って観ないと頭が混乱しそうになる。とにかく、皆、昔は人間だったんだから・・・それにしても、現在の食糧問題なんかも視野に入れたこの設定だけでも面白い。今まで全人類がゾンビ化したかのような映画はあったような気もするが、ヴァンパイアとはねぇ・・・『アンデッド』で注目を集めた、オーストラリアのスピエリッグ兄弟がハリウッドに招かれて作った映画だ。冒頭ではヴァンパイア少女が夜明け(デイブレイク)で朝日を浴びて自殺するというショッキングなシーンで期待が膨らむ。
残された期間は1カ月。それで人血は無くなってしまうのだ。血を1カ月摂らないと知性を失い、サブサイダーという化け物になってしまうのだ。また、仲間同士で血を吸えば2週間でサブサイダーになり、自分で自分の血を飲めば更に変化が早くなるという・・・ややこしいな。
エドワード(ホーク)と知り合った人間のオードリー(カーヴァン)はレジスタンスの仲間を紹介してくれた。それがコーマック(デフォー)。彼は元々ヴァンパイアで日中でも走れる車を改造する仕事をしていたが、太陽を浴びて、偶然にも人間に戻ったという経歴の持ち主。“エルビス”と呼ばれていたとか、さすがにデフォーらしいお茶目ぶりを発揮する。とどのつまり、ヴァンパイアから人間に戻ることができれば食糧問題は解決するというのだ。かくして、エドワード自らの人体実験が始まった。
製薬会社のブロムリー社長(サム・ニール)の娘は人間のまま。レジスタンスに加わっていたものの、やがて皆軍隊に捕まってしまう。エド、エルビス、オードリー以外は・・・。実験は成功。エドは人間へと戻ることができた。Welcome Back! これで人間に戻す方法がわかった。しかし、そこへ軍人であるエドの弟フランキー(マイケル・ドーマン)がやってきた。
彼らは製薬会社に侵入。すったもんだの後、一旦人間に戻った者の血を吸えば、それで人間になることを発見したエドは上手いこと言って社長に吸わせるのだ。人間になってしまった社長を飢えた人間が襲い、あっけなく殺される。さらに飢えた軍隊が突入し、エドたちを狙うが、それを人間になったフランキーが阻止、自分の体を犠牲に吸わせ、ズタズタにして殺される。フランキーの血を吸った軍人たちは人間になり、それを残りの軍人が襲う・・・阿鼻叫喚の地獄絵図と化してしまった研究所。そのままネズミ算式に人間が増えるんじゃないかと思っていたら、特効薬を開発したと自信たっぷりのエドの同僚が機関銃をぶちかます・・・機関銃なんてヴァンパイアの世界に必要ないじゃん!!
ここで映画は終わっているが、人間に戻る方法が見つかったことだし、たぶん世界は回復に向かうんだろう。地獄絵図を伴って・・・落ち着いて飲みなさいよ。血液で遊んでるかのようなとんでもストーリーながらも、死を恐れないヴァンパイアの死生観と人間らしく死を迎える死生観の激突が興味深いところ。歴史的にもワクチンの発想だって驚天動地だったのだろうし、感染、パンデミックの常識を覆す何かがあるといいですね。