劇場公開日 2010年8月14日

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「障害越えでは、飛び越えたところで前のめりにでんぐりかえってしまうところは、可笑しくて「期待」に充分以上応えてくれる、迷シーンでした(^^ゞ」きな子 見習い警察犬の物語 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5障害越えでは、飛び越えたところで前のめりにでんぐりかえってしまうところは、可笑しくて「期待」に充分以上応えてくれる、迷シーンでした(^^ゞ

2010年7月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 松竹作品の動物ものは、子供とかわいい動物を見せれば、そこそこ当たるだろうというあざとい企画がいつも見え見えなので、本作もあまり期待しないで試写会に行ってきました。
 実際に見てみると、主演の夏帆ときな子のほのぼのコンビになんだか心がほっこりしてきて、まぁまぁの出来だと思いました。まぁ突っ込める所は多々ありましたけれど、犬好き意外の人でもお勧めできるレベルです。
 いちぱんの注目点は、きな子の競技会シーンでのズッコケぶり。これが予想を超えたもので大爆笑!特に障害越えでは、飛び越えたところで前のめりにでんぐりかえってしまうところは、可笑しくて「期待」に充分以上応えてくれる、迷シーンでした(^^ゞ
 何かのコンプレックスを抱えて悩んでいる人には、本作で同じように挫折する杏子と、ずっこけるきな子に励まされることでしょう。

 主役としてインパクトの弱い夏帆を支えるのが、番場警察犬訓練所の所長である二郎を演じた寺脇康文。熱血ぶりは変わらないのですが、『相棒』の刑事役を完全に払拭して、バンカラな役どころを演じきっていました。最初は誰だかわからないくらいの成りきりようです。
 その寺脇を凌ぐ凄い子役が、所長の娘新奈を演じた大野百花。杏子を「アンコ」と勝手に読み違えあだ名にしてしまうところとか、堂々とため口つくとか、大人をくってかかる台詞回しは、迫力満点の大爆笑もの。映画史上、他に類がないほどのおませぶりなんです。

 そんな百花を、『マリと子犬の物語』や『ウルル』と同じように豪雨の山中で遭難させて、きな子に救出に走らせる所は、また同じ手を使うのかとやや苦笑。しかし、雨の救出シーンは、杏子の父親遼一が育てた警察犬が冒頭で同じような救出に取り組むシーンがでて、きな子の最大の活躍シーンに被らせているので、単なる他作品からの安直なパクリではありませんでした。
 後半あかされる遼一がその後どうなったか。そして番場警察犬訓練所への入所の経緯があかされるとき、父親の杏子への思いに、心打たれることでしょう。

 但し遼一の期待に応えようとした杏子は、きな子を特訓しすぎます。父親が育てた警察犬にきな子を被せすぎていたのでした。同じラブラドールできなこ色の毛並みで、幼犬の頃はきな子と同じように身体が弱くて、警察犬に不向きといわれたのを父親は何度も表彰される名犬に育てたことを誇りに思っていたからでした。
 しかし、きな子はきな子でした。体調を悪化させてしまって、責任を感じる杏子に追い打ちをかけるように所長は、お前の指導が悪いのにきな子のせいにするなというのです。
 ショッキングだったのは、所長がさっそく実地でそのことを証明してしまうシーン。他の優秀な警察犬でも、杏子がパートナーだと、上手くコントロールできませんでした。
 結局は犬を育てるのも、人を育てるも一緒。リードするパートナーが強く相手のことを信じて、必ずできるという確信を持っていないと、相手は期待通りには動いてくれないものなのですね。所長の言い分になるほどと思いました。

 突っ込みどころは、警察犬試験に6回挑戦にも関わらず、初回のテレビの紹介で、一気に全国的な人気者に祭り上げられてしまうところです。でも、きな子がタレント犬として、あちこちのイベントに引っ張りだことなって、いろんな衣装を着せられるポーズがとても可笑しかったです。タレント犬としては大成功です。

 それでもきな子の挑戦は続きます。最後に競技会の途中で終わってしまって、エンドロールで『只今挑戦中』で締めくくっているという割り切り方が良かったです。
 だって、本作は実話ベースで、本物のきな子は今も警察犬になるために頑張っているのですから。

 また所長は、かつて遼一の部下だったことを杏子は知らなかったことも、ヘンだなと思います。

 本作を通じて、動物相手の警察犬訓練所の仕事がどれだけ大変かがわかりました。そんな苦労も、捜査が始まればも吹き飛んでしまうようです。

流山の小地蔵