「まだまだ出逢えるいろんな色。」カラフル ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
まだまだ出逢えるいろんな色。
原作も実写版も、まったく知らなかった^^;
亡くなった魂が自殺した少年の身体にホームステイし、
そこでの修業が成功すれば、また人生をやり直せる抽選に
当たったと、おかしな関西弁の子供天使が主人公に告げる。
どうせならノビノビ生きてやろうとふるまい始めた主人公に
今まで見えていなかったものが次々と見えてくる。
まったく気付かなかった友だちの存在や、家族の真の姿、
気にも留めなかった様々な光景に戸惑いながらも、毎日が
楽しくなり始めてきた主人公。彼が現世で犯した罪とは…?
なんの予備知識もなく観た自分が真っ先に感じたのは、
あぁ本当に今の子供達っていうのは生き辛いんだなと、
なぜ胸の中に「不幸」ばかりを抱えてしまうのかと思った。
なんか常に「死」が傍らに存在していて(別にそれ自体が
悪いことではないが、)それを美化しすぎているというか、
何かというと、それに頼ろうとするのが私には不思議だ。
そもそもそんな理由でなんで死のうと思ってしまうのか。
(いくら微妙なお年頃だとはいえ)
まだ命のなんたるかも分からない年代で、勝手に人間の
寿命を決めてしまう浅はかさと、どうしてそんな繊細な
心持ちの子供に対して大人は見て見ぬふりをするのか、
皆自分のことで精一杯、親ですら子供の実態を見られず、
考えず、口もきけず、気付けば…もう取り返しのつかない
ところまできてしまっていた。という感じなのだろうか…。
ものすごく悲しいことだと思った。
本当の親子なのに、言いたいことも言い合え(わ)ない、
自分で産んだ子供なのに、親から生まれた自分なのに、
なんで?どうして?ばかりが浮かんでしまう。
子供があんな顔をしているのに、なんで傍らで世間話を
して笑っているんだろう、この夫婦は。と思った。
傷つけなければ問題ないと、傷ついた心を覗こうとしない。
傍から見れば仲の良い仮面家族?のように映っているが
子供だ大人だに関係なく、心底辛いときに話せる相手が
いないというのは、どれほど空しくて淋しいことだろうか…。
この作品にも語られているが、たったひとりでいいと思う、
崖っぷちに立ってしまった人間の心の拠り所になるのは。
今作で「真」の心を捉えたのは彼と似ている同級生だった。
友だちができただけで、こんなに毎日が楽しくなってきた、
という描き方が巧い。しかもその幸せの土台がささやかで
肉まんとフライドチキン、玉電の跡地巡り、といった具合に
今までもすぐ傍にあったものばかり。自分が不幸だ不幸だと
思う翳で見えなかった世界が色を成しカラフルに舞い降りる
様子が自転車の疾走感と共に心地良く流れて駆けてくる。
幸せは…親が掴ませるのではなくて、自分でコレだ。と思う
ものが見つかった時に(その価値が他人から見てどうあれ)、
この上なく嬉しい気持ちに繋がって掴めるのだと思う。
まったく普通のことなんだけど、今のぼくがやりたいのは、
こういう生活だったんだよー!と涙を垂らしながら言う真に
私も、あぁ良かった、良かったと彼の背中を撫でたくなった。
こんな素直な真を、最初からずっと観たかったんだよ…。
様々な俳優が声優を務めているのが話題になっているが、
私的にはあまり気にならなかった。宮崎あおいの声はすぐ
分かったけど^^;皆キャラに合っていたんじゃないかと思う。
(家族で囲む鍋はイイな…肉が固くなっちゃうぞ、と思いつつ)