劇場公開日 2010年4月17日

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「ラスト20分は感動的!、しかしロシア人とは付き合いたくなくなるねー」オーケストラ! こもねこさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ラスト20分は感動的!、しかしロシア人とは付き合いたくなくなるねー

2010年8月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

クラシックを題材にした映画は、音楽の好き嫌いにかかわらず、観客には好評を博するものが多い。この作品も、地味な映画にしては、わりに観客を多く集めている作品だ。しかし、言われているような感動作かというと、少々疑問も残る。

 今はパリの劇場の掃除婦として働いている、元はボリショイ管弦楽団の指揮者だった男が、夢をもう一度とばかりに、昔の仲間をかき集めてふたたびステージに上ろうとする、ドリームズ・カム・トゥルーがこの映画の物語だ。その舞台にたつときに、昔の仲間だった娘である若手バイオリニストを招く過程が、観客の心にグッとくるものがある。
 この作品であらためて知ることとなったのは、ソ連時代に吹き荒れた、ユダヤ人排斥の波だ。これで多くの芸術家が他国へ亡命したり、シベリアで命を失っていたかは知ってはいたことなのだが、有名人ばかりでなく、実際に多くの人たちが職を失うなどの苦しみを味わってきたのかがこの作品に描かれていて、少しショックをおぼえた。だからこそ、死んでしまった名音楽家の娘と共演を果たす最後の20分ほどの演出は、胸をうつものとなっている。

 しかし、その感動が薄くなってしまうのは、昔の仲間たちのチャランポランさ。つまりロシア人たちのいい加減さだ。これもまた、監督が演出したがったものだったに違いないし、この作品のもうひとつの核の部分なのだが、私はまったく共感できないものだった。正直、そこの演出は強烈すぎたと思う。これが事実であり、本当にこんな連中ばかりならロシア人とは付き合いたくもない、というのが観終わつたあとの感想として残った。もう少し、演出のバランスを大事にしていれば、素直な感動作になっていたと思う。

こもねこ