「IMAX3Dと3Dの両方見てきました。IMAXがお勧めです。」スター・トレック イントゥ・ダークネス 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
IMAX3Dと3Dの両方見てきました。IMAXがお勧めです。
『SUPER8/スーパーエイト』が駄作であり、『FRINGE』の謎解きがイマイチだったため、エイブラムス監督に対して、凄い偏見を持っていました。この監督が次の『スターウォーズ エピソード7』の監督をやったら、作品独特のフォースの世界観をぶちこわして、宇宙戦争の破壊シーンばかりに特化するのではないだろうかとまで危惧していたのです。 15日にいち早く3D版を見たとき、その危惧は強まりました。しかし、知人の試写会マニアや新聞評を読むと、スポックの心情の変化とカークとの深い友情を描く人間ドラマとして絶賛しているではありませんか。それには深い衝撃を受けまして、レビューがかけなくなり、もう一度見直してくることにしたのです。
せっかくもう一遍見るからには、同じ映像ではつまりません。冒頭のニビル星のシーンでは、アイマックス専用カメラで撮影してた結果。脅威の超高解像度映像が可能になったという触れ込みを信じ、それでは奮発してIMAX3Dで見ることにしたのです。
先ずは、IMAX3Dの感想から。
IMAX3Dは通常の3Dよりも高額で、2200円もします。けれどもその映像と音響の迫力は、圧倒的に違いました。まずスクリーンが通常のシネコンの一番大きいところの倍はありました。そして隅々までクリーンでシャープな映像なのです。何よりも違うのは、3Dの奥行き感です。通常の3D版が、平べったく感じてくるほど、生々しい遠近感なのです。そして、音響も凄い!座席がボディソニックのように振動してしまう超重低音から、抜けるような高音域まで、ダイナミックレンジが高くて生音に近い感じがしました。サラウンドも映像の3Dの奥行き感を高める立体的な効果に満ちていて、その場に居合わせているかのようでした。
冒頭の疑問点について結論をいえば、偏屈なスポックが一皮むけるヒューマンドラマとしても悪くなかったと思います。
バルカン星人と地球人のハーフであるスポックは感情を顕わにしない理性派。しかも規則や掟に厳格で、自分の命が危ない状況でも、ルール優先を貫くクールな人間だったのです。
カークとスポックの絆の深さは、いろいろアクシデントもあったけれど、スポックに宿る人情味を揺さぶっていきます。ただスポックを弁護すると、決して感情を捨てたのではないのです。バルカン星の崩壊と数多くの同朋の死を目撃してしまったスポックは、悲しみのあまりに、感情そのものを封印してしまったです。本来は人並み以上に情の強い持ち主。だから、余計に苦しかったのですね。
カークとの出会いは、スポックが固く封印した感情を解き放っていくのでした。具体的な場面はこうです。
カーンの襲撃を受けたエンタープライズ号の修理で強い放射能を浴びてしまったカークは、迫りくる死に怯えていました。そして、そばにいたスポックに問いかけるのです。
「怖いよ、この感情を克服するにはどうすればいい?」。
かけがえのない友人の死に臨して、涙を流すスポックを初めて見ました。あり得ないことです。
リーダーとしての資質を開花させていくカーク。スポックもその影響を少しずつ受けていたのでしょう。いままで観念の世界でしか受けとめてこなかった「死」ということが、、実際に目の前でかけがえのない友の死に直面することで、心の痛み。スポックは、理性と感情の相克に混乱しながらも、涙が止まらなくなるのです。
このシーンが象徴する心の通い合いがドラマに深みを加えました。
ヒーロー・ドラマには欠かせないのが、連帯感や忠誠心、そして自己犠牲といった不可欠の要素。うまくそんな人間味を盛り込み、大迫力の映像に負けない血を沸き立たせる宇宙サーガを作り上げました。
物語自体は、2009年にエイブラムス監督の手で再構築され、若き日のカーク船長らを描いた「スター・トレック」の続編。
惑星ニヒルの住民たちを、火山の大噴火による惑星崩壊から助ける冒頭から一気に壮大なアクションの渦に巻き込んで、画面に釘付けとなりました。
噴火口に閉じこめられたスポツクの危機を、ルール無視で救い出したカーク。しかし、規則違反を本部へ報告してしまうスポック。恩を仇で返してしまうKYなスポックの無表情ぶりには、思わず苦笑してしまいました。
今回、最強の敵としてカークたちの前に現れるのがカーン。彼は遺伝子操作で生まれた戦闘に特化したクローン人間。超人的な戦闘能力を持ち、おまけに聡明狡猾で冷酷な彼は、自分を裏切った宇宙艦隊と地球の破壊に執念を燃やし、凶悪ぶりを発揮するのです。
その手始めにカーンは、まずロンドンの宇宙艦隊データ基地を破壊。その対応のために招集された艦長たちの緊急会議の場を宇宙艇で急襲し、その多くを抹殺してしまうのです。その中には、カークが慕うバイク提督も含まれていました。カークは、カーンへの怒りを爆発させます。
主人公の敵役となるカーンでしたが、エイブラムス監督は、一概に悪役と決めつけられない被害者としての一面をカーンに持たせたところはいいと思います。
カーンを凶行に追い立てた背景には、黒幕がいました。敵対するクリンゴン星人との戦争を何としても起こさせたいマーカス提督の目的の為には、味方すら抹殺してしまう陰謀に巻き込まれてしまったのです。
マーカス提督は戦争を起こすために、エンタープライズ号まで攻撃対象とします。提督の新鋭艦の攻撃から逃れることはできないと決断したカークは、なんとカーンを釈放して共に新鋭艦に潜入して、乗っ取ってしまう展開が面白かったです。上司が裏切りの黒幕だったというのは、よくあることですが、敵役と呉越同舟で戦うというのはなかなかないと思います。
前作に続いて登場している個性あふれる乗組員たちの人物造形がよくで、カークの熱血漢ぶりやスポックのクールさはもちろんのこと、スポックとの恋人のウフーラやクルーたちとの激しい戦闘の合間のやりとりが絶妙。でも何と言っても、カーンの異様な存在感は不気味でした。ただ怖いだけでなく、その表情に同朋を気遣う哀愁を漂わせるという複雑な表情を、ベネディクト・カンバーバッチがうまく演じていたと思います。
見どころとしては、ラストの新鋭艦が宇宙艦隊本部ビル目がけて墜落するシーンが大迫力でした。生き残ったカーンがスポックと高所の飛行艇上で格闘するシーンもいいです。あと前に述べたカークがエンタープライズ号の動力部に突入して被曝するシーンでは、どうせ助かるだろうとわかっていても、手に汗握りました。何しろ、動力パルスのズレていた先端を、蹴って直すという原始的で乱暴なやり方で解決してしまうのですから、見ている方も足に力が入る分けなのです。
まさにハリウッドを代表するかのようなエンターティメント大作でした。