「シリーズでは一番のデキだが、2時間半ずっと同じペース」トランスフォーマー ダークサイド・ムーン マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
シリーズでは一番のデキだが、2時間半ずっと同じペース
トランスフォーマーたちの変形や重量感は相変わらず素晴らしく、過度な立体感を抑えた自然な奥行きの3D画像によって、いっそう重量感が増した。
マイケル・ベイは実写とVFXを融合させたアクションが得意なだけに、3Dの使いこなしは早くも一級品。
とくに後半の、NSA隊によるモモンガのような降下シーンは、ビルの谷間を抜ける臨場感が爽快だ。
トランスフォーマーたちの闘いも、過去2作では動きが速すぎて何をしているのか解らないカットが多かったが、今作では程よい奥行きを得たことで、彼らの大きさや動きが、その場にいるように把握できるようになった。
3作目にして、マイケル・ベイがやっとカメラを振り回すのをやめ、サムの目線でじっくり捉えた、トランスフォーマーたちや破壊されていく都会のビル群はなんとスケール感があることか! やればできるじゃないか、マイケル・ベイ。
ドラマ部分では、主人公サムとジョン・タトゥーロ演じる富豪になった元セクター7捜査官シモンズとの絡みだけでもじゅうぶん面白い。そこに、イッてる役をやらせたら右に出る者がないジョン・マルコヴィッチ、すぐマエを出したがるケン・チョンまで加えたユーモア度はなかなかのもの。
ディセプティコンからオートボットに鞍替えした、まるでグレムリンのようなホィーリー&ブレインズのコンビのやりとりも楽しい。前2作のヒロイン、ミーガン・フォックス演じるミカエラのことを「あれは最低の女だった」と言って笑わせる。
だからといって、新ヒロイン・カーリーに扮するモデル出身の新鋭ロージー・ハンティントン=ホワイトレイがよほど気に入ったのか、これでもかと彼女のボディラインを強調したカットが多すぎやしないか?
それで154分まで膨らんでしまったとしたら、ちょっと考え物だぞ。
せっかくドラマがしっかりしてきた。笑いのツボもいい。アクション&破壊に見応えがあって、VFX&3Dも申し分なし。シリーズでは一番のデキだ。
それでも何か物足りない。それは、2時間半、ずっと同じペースで走る乗り物に乗っているみたいな気分だからだ。たとえ時速500キロでも、どこにも寄らない単調な走りはつまらない。急ブレーキ掛けたかと思えば一気に加速、場合によっては捻りも加わるような緩急が不足している。スマートすぎて躓(つまず)きがない。