「ピーナッツのいちもつ」瞳の奥の秘密 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ピーナッツのいちもつ
教師である美しい妻を失った、銀行員のリカルド。最初は現場近くにいた職人二人が逮捕されるが、同僚の検事によるでっちあげ事件。リカルドに亡くした妻のアルバムを見せてもらい、出身地のイシドロ・ゴメス(ハビエル・ゴティーノ)の彼女を見つめる瞳が気になったベンハミンは早速彼の周辺を調査する。捜査は終了してしまい、一年経ったとき、駅でベンハミンは辛抱強く犯人捜しをするリカルドに出会い、上司でもあるイレーネ(ビジャミル)に懇願して捜査を続けさせようとする。パブロが手紙を解読し、サッカー競技場を張っていた。そこでゴメスを見つけ追跡。そこでのサッカーの試合も含めたワンカットの追跡は見ごたえたっぷり。どうやって撮ったのかもさっぱりわからないほどだ。尋問はベンハミンが優しい口調で行った。しかし、自供をしないゴメス。イレーネが「こんな奴犯人じゃないわよ」と挑発てきな態度で臨む。「膣の損傷からして頑強な男だったと思えるけど、こいつはピーナッツくらいのイチモツしかないわ」という言葉が決め手だった・・・
しばらくして、終身刑となったゴメスはゲリラ情報に詳く政府に協力的であるという理由で釈放されていた。最初のでっち上げ事件のため左遷されたロマーノの仕業だったが、ベンハミンにもイレーネにもどうすることもできない。被害者遺族のリカルドにとっては憤りを通り越している。ゴメスが恨んでいるのはベンハミンたち。書記官パブロがベンハミンの家で殺されたのだ。 そして事件から25年後にベンハミンが小説を書き始めた。事件の詳細はともかく、ベンハミンのイレーネにたいする愛情も描いていた。タイトルの“瞳の奥の秘密”には犯人のものだけじゃなくベンハミン自身の瞳だったわけだ。検事候補のイレーネと高卒の事務官ベンハミンという、身分違いの恋。彼女には婚約者もあったのだ。婚約パーティの写真のベンハミンはまさしくゴメスとかぶっていた・・・
アルゼンチンには死刑制度がない。「犯人には空虚な人生を送ってもらいたい」とのリカルドの言葉通り、「実はゴメスを殺した!」なんて言葉もおかしいと思ってたら、彼は自宅にずっと監禁していたのだ!なんと凄まじい展開のドラマだ。
ラストシーンは再びイレーネの事務所を訪ねるベンハミン。「大事な話がある」「難しいわよ」という何の説明もなされないが、お互い理解している25年遅れの愛の告白。熟年どころか老年男の純愛に思わず涙してしまった・・・