「なぜバカ殿を…監督の力量の限界か(重度ネタバレ)」必死剣鳥刺し とみ3さんの映画レビュー(感想・評価)
なぜバカ殿を…監督の力量の限界か(重度ネタバレ)
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本作は庄内地方でのロケ。自治体のバックアップ、細かい所作も再現されており、抜群の雰囲気ですが、いささか「原作のまま」と言った感があります。
人物描写としては、妻の姪との濡れ場が余計。主人公のストイックさがぶちこわしです。また1年蟄居していた割にはふっくらな主人公の裸体(うう)もやけにでてくるのと相まって、緊張感を削ぎます。
本作の見所としては、吉川晃司さんでしょう!!
主人公との対決は稀に見る名シーン。ただ主人公との交流を通し、おそらくは「バカ殿」と対局にあったであろう、彼の思想や心性が描かれなかったのは残念です。主人公とのからみがもう少し欲しかった。
そして、ラストの切り合いですが、往年の名作『切腹』にも劣らない大立ち回りですが「オチ」がいただけない。東映作品なのに、お客に「後味の悪さ」を感じさせてしまいました。
山田洋次・深作欣二監督といったエンターテイメント重視の作家でしたら、おそらく原作を改編し「バカ殿も斬る」「一矢報いる」という展開にしていたと思います。
脚本の流れから、どう考えても「諸悪の根源」は藩主。主人公に思い知らされる、もしくは後に讒言で罰せられる、というフォローがなければ不自然です。
「敢えてラストを変える」という決断ができなかった監督の限界=本作の限界だと思います。
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