劇場公開日 2010年12月4日

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「朝の連ドラのような出来」武士の家計簿 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5朝の連ドラのような出来

2010年12月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

刀ではなく算盤を武器に仕える下級武士『御算用者』に着目したテーマは興味をそそる。
貯蔵米の計算が合わないと、辻褄が合うまでとことん追求する算盤馬鹿の直之。お駒(仲間由紀恵)との間にできた長男・直吉が4歳になって“着袴の祝い”の祝膳では、経費を節約するため鯛の塩焼きの代わりに“絵鯛”を並べる。困惑する親戚・縁者の表情に笑えるが、一度決めたら恥も外聞もかなぐり捨てて事を実行する直之の芯の強さがよく出ている。愛用の品を手放したくないと駄々をこねる母・お常(松坂慶子)も可哀そうやら可笑しいやらで、さあこれからどうなる?と見入るのだが…。
事業仕分けもやるならかくあるべしと謳ったところまでは良かったが、その後、猪山家の家計がどうなったのかが今ひとつ不明である。倹約の数々は笑いを誘うが、その結果を知りたい欲望を満たしてくれない。
たしかに長男・直吉は新しい時代に於いて、頭脳を使う役目で軍の中枢に昇りつめ、猪山家安泰という未来が待つ。だが、本作のテーマは“入拂帳”を元にした家族物語のはずで、直之を中心とした倹約とその成果に対する期待と、猪山家の行く末とは次元が違う。
最近の森田芳光監督、相変わらず着眼点は面白いが、切り口が少し甘くなったような気がする。
堺雅人と仲間由紀恵がなかなか年老わない。メイキャップするものの予算を掛けた映画というよりは、朝の連続テレビ小説を見ているようだ。
堺雅人が出る作品は、観た直後よりも、日が経ってじわじわと良さが伝わってくるものが多い。だが、今作に限っては少し物足りない。眼に浮かぶのは、駄々をこねる松坂慶子、右往左往する中村雅俊、どっかと根が生えながらも愛嬌のある草笛光子らの掛け合い漫才のような日常だ。そこだけなら★4つだ。話を欲張って、堺雅人を活かすどころか殺してしまった。

マスター@だんだん