「本当の悪人は誰なんだろう。」悪人 蜷川吝塀さんの映画レビュー(感想・評価)
本当の悪人は誰なんだろう。
今朝(2025/09/06)観ました。
『ほぼ日』というアプリに、李相日監督の対談が掲載されていて、気になって観てみる事にしました。
本作を観終わった現在、劇場で公開中の『国宝』や、『怒り』も気になっています👀
出会い系サイトで知り合った男と女が、男が起こした事件をきっかけに再会し、事件が大ごとになり逃避行を始めるストーリー。狙っている男(岡田将生)に捨てられた女(満島ひかり)。山中の路上にうずくまる失意の彼女を、後を追った動機はどうあれ、善意で助けようと手を差し伸べる男(妻夫木聡)に対し、罵詈雑言を浴びせ、あまつさえ狂言で陥れようとする女に手をかけてしまう男。殺す動機を作ってしまった女と、殺してしまった男。一体どちらが悪人なのでしょう。…勿論殺人はやってはいけない事ですが。
それ以前に出会い系サイトで知り合った女(深津絵里)に心のよりどころを求め、手前の欲求を満たし、翌朝現金を女に手渡しホテルを後にした彼に、憤りを感じましたが、共感できる部分も多いです。
彼氏を連れ込む妹と同居している女は、家では肩身が狭く、居場所がありません。自宅と職場の往復の生活は文字通り無味乾燥。そんな空虚な毎日を良くも悪くも、男は変えてしまったと言えるでしょう。
大切な娘を殺された家族。闇夜の山中に女を置き去りにした事を、まるで武勇伝のように友人に語る男。殺人犯として警察に追われる男の家族や親族など。どの視点でみても共感出来ますし、イラつく面もあります。
あやしい漢方薬に大金を遣っちゃう祖母。娘を亡くしすすり泣く妻を怒鳴り散らす夫。詳細を知らないのに犯人と一緒にいる姉を罵倒する妹などです。
少し腑に落ちないのは、映画佳境、灯台に潜伏したふたりのもとに警官隊が突入した際、男が女の首を締めあげるくだりがあります。あれは、男が警察の前で悪役に徹し、共に逃走した女を被害者に仕立てる算段だったと考えましたが、その後、警官隊に引き離され、男が手を伸ばして女の手を握ろうとしていた為「???」になりました。手を握りたい気持ちはわかりますが、女に暴力を振るうような下衆役に徹して欲しかったです😕
主演のふたり(妻夫木と深津)を始め、岡田将生、満島ひかり、柄本明、塩見三省、樹木希林、でんでん、モロ師岡など、脇を完璧に固めていて、悲劇でありながら、展開に目が離せませんでした。
120分超えの長編で少し疲れますが、考えさせられるストーリー。良作です👍
コメント有難うございます。
映画と原作には少なからず齟齬が起きてしまいますよね。
原作をそのまま映画にしたら尺がどんなに長くても足りなくなってしまうので、兼ね合いが難しいですよね💦
私も同じ様な感想でしたが原作を読んでた妻に、『灯台の首絞めシーンは相手を、被害者にするため。毒母に少額の現金をせびるのは、お互いが加害者になることで、母を楽にさせるための優しさ』と、解説されました。
尺が短い映画だと難しいですね。
※うちの妻の思い込みで、間違った解釈をしてたら、申し訳有りません。