「もったいない映画」悪人 座布団さんの映画レビュー(感想・評価)
もったいない映画
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何が悪なのか、誰が悪なのか…。
加害者だが被害者でもある、というのは人物を掘り下げる人間ドラマとしては当然の要素なので、そこまでの評価には繋がらない。
そして、深津絵里の感情の流れについていけない。
孤独を出会い系サイトで埋めようとしていた彼女が、青年に何を見出し、何を求め、逃避行に走るのか。
寂しかった、退屈な日常から飛び出したかった、彼は私を必要としてくれた、では弱いのではないか。
原因は彼女が事件そのものと関係がない設定であること。
青年が起こした殺人事件が物語の軸としてるが、彼女は遺族でもなければ、加害者の家族でもない。
ましてや被害者と面識もなければ、青年とも出会ったばかり。
物語の軸と噛み合わない故に彼女が出演するまで時間がかかるし、彼女の動機を描ききれない。
ただひとつ秀逸だったのは、逃避行の果てに辿り着いた海で青年が見せた笑顔である。
母に捨てられ、「目の前に海があると、どこにも行けん気がする」と閉塞した寒村で育った青年の人生で、初めて充実した瞬間だったのだろう。
笑うことを忘れた青年が、絶望といえる状況下、初めて見せた笑顔が悲しさを際立たせている。
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