「「悪人」そして「愚行録」と。」悪人 れいすけさんの映画レビュー(感想・評価)
「悪人」そして「愚行録」と。
まあまあ暗い気もちになる映画だけど、評価は4です。
殺人事件を通じて、男女関係を通じて、加害者、被害者、登場する人々の様々な心情を生々しく描いた映画である。
映画「愚行録」を一ヶ月前にみたが、この映画「悪人」での演技もあっての愚行録だったのかなあ。妻夫木聡は、まあすごい俳優だ。
しかし、満島ひかりは、またまた幸薄い役柄で出演している。彼女はどうか明るい役柄も与えてもらえないか。心配になる。
殺人は絶対的な悪である。
祐一(妻夫木聡)の育った環境や、それまでの人生は決して、恵まれたものではなかったかもしれない。しかし、なぜ殺人を思いとどまる事ができなかったのだろう。
しかし、満島ひかりに侮辱され、レイフされたと嘘ついて訴えると言われ、逆上して、彼女の首を締めてしまった。
確かに祐一は、悪い人間とは言い切れない。父の病院に連添い、祖母と温かな会話を交わしながら細々と暮らしていた優しい青年ではなかったのか。
後半で話されるが、幼少期の体験から自分の言った言葉なんて信じてもらえないと彼は思い込んでいた。人を信じる事ができない。冤罪を恐れ恐怖し混乱に至っての行動だったのかもしれない。衝動性は誰にでもあり、怖いなと感じる。
もっと早く光代(深津絵里)に出会えていたら、劇中にある言葉の通りなんだがなあ。
一方で岡田将生の役柄は醜い。
まだ学生にして、人を使い捨てにしか考えないような人間。娘を殺され柄本明が、なぜ車から下ろし置き去りにした!と詰め寄るシーン。この悲痛な叫びにすら何の感情も動かさない。人の子として、生まれてきたのに、彼の人間性はどうやって形成されたのだろう。
最後のシーン。
なぜか、本当に自分の人生を捨ててまで、祐一を信じて愛した光代の首を、祐一は締める。俺はあんたが思ってるようないい人間じゃない。謎だった。
祐一は、祐一を誘い逃亡してしまった光代に罪が及ぶことを恐れ、自分が連れ回して殺そうとしたという事実を作りたかったのだろうか。本当に殺す気があったのか?
ないよね?意味わかんないし。僕にはこの謎がわかりませんでした。
また昨今の世情を考えてみる。恋愛というか男女の関係において、いや社会の仕組みもそうなってきている、人を自分の道具にしか思わない人間が増えているのではないかと思わされる。悲しい現実だ。
昔々見た映画「静かな生活」の中で、人は人の道具ではない。その言葉を聞いた時にググッと気持ちを揺さぶられた思いを思い返す。
満島ひかりも、被害者ではあるが、祐一を道具としてしか見ておらず、皮肉な事にその満島ひかりも岡田将生に道具のようにしか扱われなかった。山中の路上に放置するなど物いがいの何ものでもないだろう。
人間は物ではない。
考えさせられる映画のひとつだろう。
コメント失礼します。
>祐一は、祐一を誘い逃亡してしまった光代に罪が及ぶことを恐れ、自分が連れ回して殺そうとしたという事実を作りたかったのだろうか。
私は祐一の光代への思いだと思います。
もう戻らないかもと思ってたら、一生懸命走って帰ってきてくれたのが嬉しくて、でも警察が来るのは時間の問題で、せめて彼女は完全な被害者にしようと咄嗟に行動したのでは。自分は悪人でいい、光代を守れればそれでいい。って。