「あてどない非日常を楽しむ」東京島 たっぴこさんの映画レビュー(感想・評価)
あてどない非日常を楽しむ
これまで経験したことがない、とても不思議な感覚を味わった129分でした。観ている私も出演者(の日本人の男たち)と一緒に、あてどのない非日常をさまよっているような感覚に襲われていて、それが決して不快ではない、という。あと1時間ぐらい尺が長くても、全然飽きなかったと思う。というか、「ここ、もっとじっくり見せてほしいなぁ」と思うシーンが多いぐらいだった(監督ははもっと尺を長くしたかったんじゃないだろうか?)。強烈なカタルシスを伴うエンディングが用意してあり、それに向かって収斂していくストーリーではないから、彼女と彼らの非日常を丹念に描くのが肝であって、そのポイントが実によく押さえられていたんじゃないかなぁ、と。
演者さんは、みんないい味出していたと思います。若い人がみんな達者なのに感心した。でも、やっぱり窪塚くん、抜群によかったなぁ。ダテに空を飛んだことがあるわけじゃなかったんだなぁ(苦笑)。あの狂言回し的なセリフが自然に聞こえるというのは、普通じゃないです、やっぱり。
木村多江さんは、何をどう演じても、一定の線以上は下品にならない人だなぁ、と。正直、前半は少し歯がゆい感じもあったのですが、後半は肝が据わった感じが伝わってきて(それは役柄としても、演者としても)、尻上りに良くなっていったように感じました。
先に「不快ではない」という言葉を使いましたが、この映画は観客に不快な思いをさせようと思えばいくらでもさせられる素材だと思うけれど、それを不快にさせない方向で一貫させたのは、やはり篠崎監督のトーンだなぁ、と観終わってあらためて感じました。
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