「ヤン・イクチュン監督 心の叫び 魂の咆哮を耳にせよ」息もできない septakaさんの映画レビュー(感想・評価)
ヤン・イクチュン監督 心の叫び 魂の咆哮を耳にせよ
第10回東京フィルメックス観客賞・グランプリW受賞
これは、東京フィルメックス始まって以来の快挙です!!
今作、公式パンフレットに配給会社名が載っており、
日本公開が、その時点で決まっていたので、映画館で
ロードショー公開されたら観に行こうと、パスしていました。
それが、クロージング作品
『渇き』の前に催された授賞式のセレモニーでW受賞。
しかも、自宅前で撮影したという受賞を喜ぶヤン・イクチュン監督が
道路を、走ってきた車にはねられそうになりながら、無邪気な笑顔で
変態ダンスを舞いながら、受賞を喜ぶ映像がスクリーンに映しだされる。
これは、絶対、公開されたら
速攻で、観に行ってやろう!
その瞬間、心にかたく誓ったのでした。
☆彡 ☆彡
・・・コトバになりません
涙、泪、涕、ナミダ、なみだ
パンフレットを購入し読みながら
帰ったのですが、いくつものシーンが
頭の中に甦ってきてしまい、パンフを閉じても涙止まらず。
映画館、電車内、家路につく道、家に帰宅
映画館から家に帰宅するまで泣き続けていました。
電車内では、ずっと俯いていました。道を歩くときは
夜で外が暗くなっていたので、暗闇をヒックヒック、
涙をしゃくりあげながら歩いていました。
涙だけじゃなくて、叫びたくてしかたがなくなり、
でも叫ぶ場所はない。自宅の湯舟にお湯をはり、
風呂に入るとき、湯舟にはられたお湯をこぶしで、
何度も何度も殴りつけてしまいました。
顔は、飛び散ったお湯と涙で、グチャグチャでした。
◇ ◇
私、映画を観ていて初めてです。
家族や友人が笑顔で食事をしている
シーンを観て号泣してしまったのは。
もうたまんなかったんです。
そこに辿り着くまでの道のり、
そこに表れる笑顔の裏に潜むもの、
そのすべてがあまりにも重過ぎて、
それを思うとみんなの笑顔が悲しくて、
涙が止まらなくなってしまいました。
◇ ◇
ヤン・イクチュン監督。
監督自身の体験や、周りで起きたことを
ベースにして、脚本を書き上げたそうです。
パンフレット、映画雑誌に載っているインタビュー
そういったものを読んでの感想なのですが、
「この映画を作らなければ、なにも始められない」と
監督自身の中から沸き起こる衝動のようなものに、
突き動かされて作ったのではないかと。
そして、
衝動は大きすぎて
映画でありながらも、
映画としてスクリーンの中に収まりきらない。
叫び
悲鳴
心の声
声なき声
スクリーンには映っていないもの
無数の矢がスクリーンから放たれる。
暴力
罵詈雑言
自分を表現する方法を知らない。
他人とコミュニケーションをとる方法がわからない。
一匹狼
わかりあえた
友人ができた
家族ができた
それは一瞬
一匹狼は
一匹狼としてしか生きていけないのであった・・・
☆彡 ☆彡
本読みなし、リハーサルなし
役者には最初から全て出しきって欲しい
ヤン・イクチュン監督は役者にリクエストしたそうです。
DV
貧民街
ベトナム戦争
暴力的ではあるけれども
決して眼を背けてはいけない
韓国の家族が、そこに存在しました。
ヤン・イクチュン監督が
自宅を売り払ってまで作った
心と魂だけで勝負した低予算映画。
こんな作品が商業的にも成功した
韓国の映画に対する姿勢に敬意を
表すると同時に、嫉妬を覚えてしまいました。
『息もできない』
2010年3月。
私は奇跡の瞬間に遭遇したのかもしれない。