「凡庸な大作。 見せ場は盛り沢山だがキャラの魅力不足。」パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
凡庸な大作。 見せ場は盛り沢山だがキャラの魅力不足。
監督は『ハリー・ポッター』1,2作目のクリス・コロンバス、主要キャストはほぼ無名の新人、実力派俳優で固めた脇役陣、強大な魔力を秘めているという主人公の設定。
どー考えたって『ハリポタ』の柳の下のドジョウを狙ったとしか思えない上、イマイチ迫力にも欠ける予告編を観て『これはいよいよ駄目っぽいなぁ』と思っていたが……
結論から言うと予想よりかは面白かった。少なくとも、主人公らが受動的な『ハリポタ』初期作よりもずっとアクティブで、個人的にはこっちの方が若干好み。
凡庸なカメラワークは相変わらずだが、冒頭から展開が早く、派手な見所も多い。実際に観るとその迫力は予告編の2倍増しくらいだ。
主人公パーシーも自分の秘められたパワーをガンガン使って色んな敵とバトルを繰り広げる。ミノタウロス、メデューサ、ハイドラなどの有名怪物も続々登場して飽きさせないし、それらギリシャ神話の生物が現代アメリカに溶け込んでいるという設定もちょっと面白い。
だが3つの真珠探しに冥界巡りにと冒険シーンを詰め込み過ぎた為か、とにかく展開がせわしなく、心理描写の底もかなり浅いので、役者がまずい訳じゃ無いのにどうにも各キャラクターに感情移入しにくい。
まあ実際のギリシャ神話で登場する神々も浅はかな言動が多いけど、この映画の神々はいくら何でも単細胞すぎて、神々しさや威厳は限りなく薄い(特にゼウスは短気なオッサンにしか見えない。演じるショーン・ビーンは大好きなのに……)。
それより何より主人公パーシーの、物語を通しての肉体的・精神的成長が見えづらい点が最も痛い。
そりゃ主人公が最初からタフなのは観ていて安心感はあるけど、強すぎるとちょい興醒め。
やっぱり主人公が己の弱点を克服して成長していく姿を見てこそ、観客としても応援したくなるというものじゃないかしら。
続編も作れそうな映画だし、スタジオ側もその目論見があるんだろうけれど、正直言って続編を観たいとは思わないな、コレは。キャラのその後がどうなるかに興味が湧かないんだもの。
そういう点では、キャラの特徴や魅力がしっかり出ていた『ハリポタ』は良く出来ていたのかもしれない。
観て損したとは言わないけれど、鑑賞後の印象は限りなく薄い映画。
<2010/2/28鑑賞>