「終わりなき戦いを終わらせる為の“まんてんかいとう”」GANTZ PERFECT ANSWER 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
終わりなき戦いを終わらせる為の“まんてんかいとう”
待ちに待った続編!
どうも前作ほど前評判が良くなかったように見受けたので
(前作をお嫌いな方も多いですけど)
不安だったが——
いや、見事でした!
アクションも物語のテーマもスケールアップし、
粗は目立つがかなりの力作に仕上がっていた。
物語に関わりない戦闘シーンは潔くバッサリ排除。
それでもアクションのボリュームや出来は前編以上だ。
まず前半のハイライトである“黒服星人”との戦闘シーン。
これは、マジで、凄まじい。
カットが早すぎるのが不満だが、
繰り広げられる阿鼻叫喚の殺戮や、狭い電車車両内での刀と自動小銃による戦闘など、
完全に邦画規格外のアクション。
特に電車から飛び出した主人公が再び車内に戻るまでのシーンなんて、鳥肌モノだ。
後半もアーケード大爆破や最後の星人との剣戟シーンなど、
事前情報から得られる予想に違わぬ怒涛のアクションが繰り広げられるが、
こちらは前半と違い、アクションの迫力でエキサイトする性質のものでは無い。
互いの願望のぶつかり合い。
同時進行する復讐の連鎖。
踏みにじられる人間愛。
後半の戦いはひどく不毛だ。
得られるものがひとつも無い戦いだ。
ただ意の異なる者同士が、互いを否定し、潰し合うだけの戦いだ。
そこに爽快感は無い。虚しさと悲しさしか残らない。
この映画は全力でアクションシーンを描きながら、
全力で人間同士の衝突を非難しているかのようだ。
終わりの無い戦いを終わらせる為の“まんてんかいとう”。
それは自分の幸福を顧みず、
「みなさん、おしあわせに」と願う心。
前作で玄野が見つけた答えを、更に深化させた答え。
そんなの理想論だろうね。
人はあんな聖人にゃなれない。
けどもし実現できたら、あのラストのような、とんでもなく甘ったれで、
けど本当は誰もが望んでいる世界を創れるかも知れないじゃない。
以下、不明点と不満点。
玄野が最後の星人を殺した理由がピンと来ない。
星人の残党が居たら、これでオシマイとはいかなくなりそうだが。
あと、ガンツという存在の謎については“まんてん”どころか50点くらい。
だがテーマを浮き彫りにする物語上のツールとしては一定の役割を果たしているので、
そこまで不満はない。
けど人間である山田孝之がやはり物語説明の為のツールでしか無いのは、ちょっとね。
しかし、秀作。
日本のエンタメ大作は進化した!と感じました。
<2011/4/23鑑賞>