「新「想」開店?」GANTZ PERFECT ANSWER ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)
新「想」開店?
佐藤信介監督が、二宮和也、松山ケンイチという二大人気俳優を迎えて描く、SFアクション作品堂々の完結篇。
福山雅治、柴咲コウ主演の映画「容疑者Xの献身」(08)を観賞した時の戸惑いは、忘れられない。同キャストで作られたTVシリーズ「ガリレオ」で貫かれていたコミカルな描写、軽快な展開を予測していると、これが全く違う。重々しい空気の中で、神妙な顔を終始崩さないキャスト陣・・。これは、同じ原作なのか。
もちろん映画版も丁寧に作られており、不快感は無かった。しかし、何か裏切られた感が印象に残る体験である。
本作もまた、同様の戸惑いが色濃く残る。前作の描写にあるのは、鮮血飛び散る残忍な世界の中でも、ぴょこぴょこパンチが笑いを誘う田中聖人や、無駄に壮大に出現し「?」の苦笑をもたらす千手観音など多少なりともユーモアで緊張をほぐす姿勢が随所に見られ、観客の沈み込む感情に配慮した工夫が見られた。
だが、本作はそうはいかない。徹底的に暗闇と無機質な空間に人物達を押し込み、問答無用の殺戮世界を作り上げている。
そこには完結篇というプレッシャーから、物語を引き締めようとする作り手からくる必死のサスペンスがあり、姿勢としては正しい。しかし、この作品はあくまでもアイドルとイケメン人気俳優を据えて作られたエンターテイメント。ここまで、陰湿に仕上げる必要があるか。
悲壮感と、戦いへの覚悟、そして自己犠牲。原作が訴える壮大な人間の感情の爆発と可能性をきちんと二部作にまとめ、キャストそれぞれに見せ場を作った堅実な作り方には大いに賛美を送りたい。
しかし、尻すぼみ感、唐突すぎる感が充満する松山同士の「復讐」談話に始まり、もう少し複雑な人間の弱さ、見栄、決意を描く努力が見たい。ただ残酷に切り刻まれただけでは、同情も出来ない。
二宮の可憐な上半身セミヌードに、微かなサービスとお得感を与えていただけるのがせめてもの安らぎか。
何はともあれ、最先端の技術をフル活用して挑んだ日本印の本格SF作品に、よく頑張ったと拍手を送りたい。