劇場公開日 2010年6月5日

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「演技じゃないのね、コメディは」シーサイドモーテル ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0演技じゃないのね、コメディは

2011年4月8日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

単純

森山未来主演「スクールデイズ」で、その異端ぶりを発揮した守屋健太郎監督が、生田斗真、麻生久美子など旬の俳優陣を集めて描く、コメディ作品。

本作を観賞していると、コメディ映画の奥深さを実感させられる思いがする。感涙ものや社会派ドラマのようなジャンルにおいて必要とされるのは的確に演じる人物の心情を表現していく高い演技力である。しかし、コメディという世界に本当に求められるのは、実は高い演技力ではないのかもしれない。

「愛嬌」と「馬鹿を愛する心」。この二つが、どうしても欲しい。少なくとも、私は欲しい。これは長年演技畑を歩いてきたベテラン俳優であっても、年月が養ってくれる能力ではないので・・上手くなるとは限らない。その人間が本質的に持つ先天的才能であるように思えてならない。

その点で考えると、本作の人選は長短入り混じっている。

主役を張った生田は、舞台で培ってきた堅実な演技力は十分に発揮しているが、どうしてもこの作品の破天荒なコメディ空間に馴染めていない。古田新太、小島聖といったコメディ常連俳優と比較しても、ふわふわしている。もちろん、生田を残念な俳優だと評する気は毛頭ない。ただ、「馬鹿を愛する」ことは、ただ舌を出して「てへっ」と誤魔化すこととは違うのではないか。

対して、玉山鉄二の思わぬ楽しさに驚かされる。馬鹿馬鹿しい台詞も、ギャグも撒き散らしていないのに、その存在が、可笑しい。「飯食ってる人の前で煙草吸ってんじゃねえよ」と、他人の頭を叩くだけで、可愛らしい。言葉遊びで盛り上げるでもなく、ただ真面目に、不器用に空気に溶け込む。違和感に気が付き、適応する反射神経。これは、訓練では身につかない。「馬鹿・・好きなんですね」と思わず頬ずりしてあげたくなる愛嬌が、今後に期待をもたせてくれる。

内容に関しては、論じるほどの努力も、センスも見えてこないのでここでは敢えて触れない。ただ、コメディという世界は特に難しい、そしてややこしい表現技法だと学ばせてくれる教科書としては、観ても損はない。

ダックス奮闘{ふんとう}