「子をあやめる姉 子をうまぬ妹」ずっとあなたを愛してる septakaさんの映画レビュー(感想・評価)
子をあやめる姉 子をうまぬ妹
読売新聞夕刊の
正月映画特集で満点を取っていたのが
『カールじいさんの空飛ぶ家』『牛の鈴音』そして、今作。
公開初日に満席になるのを見越し、
映画館の会員特典を利用し1週間前に指定席確保。
結局は、1回目は8割ほど、2回目が満席と
読みは、外れましたが、良席で鑑賞できました。
☆彡 ☆彡
重いなぁ
重すぎて
号泣できなかったよ
隣の女性。
鼻水啜るは、
鼻かむは、で号泣していました。
概ね、女性客のほうに感涙されている人が目立ちました。
“我が子を殺した女性の再生の物語”
ストーリーの核はこれですから、
女性のほうが心に来る衝撃が大きかったのだと思います。
終盤に、その真相が本人の口から語られますが、
特に、女性のかたはスクリーンを観ていられず、
劇場の外に出てしまわれる人がいてもおかしくない気がしました。
◇ ◇
作品の視点は、
再生する女性よりも、
彼女を温かく見守る人、
中には冷たく突き放す人、から
見た視線に重きが置かれます。
主人公の女性は
起こしたことがことだけに、
無口で殻に閉じこもっていますので、
周りの人のセリフのほうが多いのです。
そういった
周囲の支えにより
彼女の表情も解きほぐされていきます。
この点を、フィリップ・クロデール監督は、
彼女のセリフでなく、先に触れた表情や、
ちょっとした仕草で、表現をさせています。
感心したのは
“距離”の使いかた。
ネタバレを防ぐため2つだけ。
例えば、2週間に1度の面接で、
警察署を訪問していたのが、やがて面接の場は、
カフェにかわる。そしてカフェの中でも、お互いの座る位置が、徐々に近づいていく。
他にも
彼女を預かる妹一家のご主人の
ちょっとした表情の変化からも、
彼女との距離が近くなる様子をうかがわせています。
ちなみに、このシーン、
彼女は、最初胸の前で腕を組んでいるんですね、
しかし、彼からの信頼=距離が近づいたことを感じ、
腕組を、崩します。緊張から緩和、このあたりの小さな
心のうごめきを表現するのが、実に巧みな監督さんでした。
もちろん、それを演じきる役者の力量抜きには語れません。
◇ ◇
変化は再生する彼女だけではありません。
彼女の再生を助けようとする人々にも変化が起こります。
それは、喜ばしいことばかりではなく、悲劇をも起こすのですが・・・。
私が一番グッと来たのは、
姉妹が揃って母親の病室を訪れるシーンかな。
観る人によっては「よかったね」と笑顔になるのかもしれませんが、
登場人物たちの心情を鑑みると、あまりにも悲しくて泣けて仕方がありませんでした。
姉妹が病室を出て行ったとき、心底ホッとしてしまいましたから。
ただ、多くの人が一番泣けるのは、
終盤、彼女が真相を語るシーンでしょう。
私は、彼女の想像もできぬ苦しさに、涙はでず、
思わず、口元を両手で覆ったまま、しばしの間、固まってしまいました。
“わたしは、ここにいる”
ラスト。
物語の幕は下りても、
彼女たちにとっては、
ようやくスタートラインに立てた。
ここから、また始まって行くのです(笑顔)
☆彡 ☆彡
とても緻密で完成度の高い作品です(笑顔)
“ずっとあなたを愛している”
あなたはなにがあったとしても、
家族に声をかけてあげられますか?