「お母さんのハードボイルド」フローズン・リバー マージョさんの映画レビュー(感想・評価)
お母さんのハードボイルド
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「戻ろう」「それしかないわ」にシビれた。
うなだれた白人女性レイの、生足のアップ。涙でにじんだマスカラ。さびついた浴槽。
女性監督ならではの視点が光る。しぼんだ肌に彫られたタトゥーやパンダ目や湯垢が、貧困にあえぐ女の絶望を、言葉より雄弁に物語る。
レイは高額の報酬目当てで、密入国ビジネスに加わった。相棒は先住民族のライラ。二人の間にも、まともな会話はない。見ず知らずが最悪な出会いを経て、互いに我が子を養うためだけに組んだのだ。人種の違いも手伝い、不信も露にいがみあう。
そんな彼女達が、密入国者の赤ん坊の危機に迷わず「(助けに)戻ろう」「それしかないわ」決断はやっΣ(@д@)
報酬は既に懐、危険な救出、しかも他人の子…
なのに、たった二言で反発をかなぐり捨て、同志になれる。夫や姑の愚痴で傷を舐めあうママ友ではない。子供への想いだけを武器に、全てをなげうつ戦友だから。なんて潔く、カッコいい。
最後まで会話は必要最小限、笑顔さえ交わさないレイとライラだが、それでいて(あんたならわかるでしょ?)的な、目と目で伝わる絆が確かにある。
新人監督の初長編は、ハードボイルドな母親達。小粒でもピリリと辛い佳品。これだから、ミニシアターはやめられません。
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