「意外にコメディタッチで大爆笑してしまいました。」ゴースト もういちど抱きしめたい 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
意外にコメディタッチで大爆笑してしまいました。
オリジナルの設定を男女逆にした以外、ほぼ踏襲していながら独自色を打ち出すことに成功しています。
最大の特徴は、まるで韓国映画かと思うくらい、直球勝負のストレートな感情表現と爆笑を誘うコミカルな演出が際立っていました。ちょっと邦画にない感覚の作品です。
主役二人のロマンスは、みている方が小っ恥ずかしいほどのアツアツぶり。小地蔵なんて、小悪魔モードに突入して、勝手に乳繰りあっとれ~と突き放してみておりましたよ。人気深夜テレビ番組『お願いランキング』に登場するお願い天使のようにね。
それは演出が悪いからではありません。「死んでも君を守りたい」というような甘い台詞の応酬をためらうこともなく、たっぷり見せつけられますと、どうも素直に感情移入していられなくなって、あまのじゃくな感情がフツフツと涌き上がるのですね。
これ逆に女性の立場だったら、ヤバイでしょう。冒頭から、ソン・スンホンの愛のメッセージに、ハートを瞬時に奪われてしまうこと必至です。
けれども、さすがに最初にいきなり二人が出会うシーンは、韓流ファンが集結した試写会場でも失笑が漏れました。もう目と目とがあっただけで、表情が恋人モードになってしまうのはあまりに早急すぎます。
まぁ、それでも相手が松嶋菜々子とソン・スンホンだから、強引に納得させられてします。例えば樹木希林が相手だとしたら、爆笑ものですね。(実は後半に本当にこんなシーンが登場します。)
前半は二人の純愛を描くラブロマンスから、後半は七海が殺された理由と犯人が明かされていくサスペンスタッチに変わっていき結構アクションの要素も加わっていきます。オリジナルよりも意外な犯人像に置き換えられたことで、犯人の抱える葛藤も見所となったと言えるでしょう。
注目のろくろのシーンは、二人が愛に目醒める直前のシーンとして描かれるので、オリジナルよりも、より強くロマンチックです。撮影方法も、手が込んでいて、カット割りが凄く細かく、パンした後の窓越しの長回しの映像が印象的でした。屈折したガラスを通すことで、愛を語り合うふたりの姿がデフォルメされて、シルエットとして描かれるのです。そして全編を通じて、語られるふたりの絆に深さにきっと感動されることてでしょう。 ラストは、邦画にありがちな、それは夢でしたというフェイントをかけられたのには参りましたが、納得のいく終わり方でよかったと思います。
細かいところで、シナリオのアラが目立つところはあるものの、リメイク作品としては随所にアイディアが盛り込まれていて、オリジナルを見た人にも楽しめる作品としてお勧めできます。
ところで、本作を意外にも爆笑の渦に引き込む道化役を担っているのが、インチキ霊媒師運天役の樹木希林です。オリジナルにも登場する役柄ですが、こちらはあくまでひょうきん。ありもしない霊感で詐欺を働いてきたのに、突如七海に話しかけられで、びっくらする姿や、キム・ジュノに通訳ところなど可笑しすぎます。ちなみに運天のキャラは自分で膨らませたとかで、衣裳やカツラ、持ち道具なども樹木希林自ら用意したそうです。
他に救急車の中でゴーストになってしまう、カメオ出演の温水洋一も可笑しかったです。意外や意外、笑える作品としても、多いに期待してくださいね。
そして何と言っても特筆すべきなのは、女優復帰したばかりの松嶋菜々子の演技です。 主人公の七海は大企業のトップという設定のため、鮮やかな青いワンピースにジャケットをはおり、ガラス張りのオフィスビルを颯爽と歩く姿は、まさに時代の最先端を行く女性企業家そのものといった印象。
キリッとした表情で、女性の芯の強さを表現するその演技は、後日、撮影するラブシーンとのメリハリを緻密に計算したとか。その落差の大きさに復帰したばかりとは思えない女優松嶋菜々子の凄さを見たような気がしました。
さらにソン・スンホンの日本語のセリフも完璧。韓国から来たばかりという設定ながらながら、それに逃げずに現場での空き時間にも練習を重ねたというプロ根性を高く評価したいと思います。
そして本作のダークホース的存在なのが、天才子役の芦田愛菜。彼女の役どころは、死んてでからの七海に、先輩ゴーストとして念力の使い方をコーチする結構重要な役どころなんです。松島を驚愕させたほどの感情をきっちり表現する演技にぜひ注目して欲しいです。
その念力ですが、願望実現には集中力と意志の力を徹底特訓しないとダメなんですね。たとえ天使だろうとこの世の人間だろうと法則としては変わりません。本作で表現されている霊的な表現は、かなり正確なものとして好感が持てました。
こういう作品だから、小地蔵はついでに言っちゃいますけど、単なる映画の中のお話しではなく、本当に死というものが愛する二人の仲を隔てることはないのです。
もし不運にも、愛すべき人を事故や病気で失ってしまった人は、本作のストーリーと小地蔵の言葉を思い出されてください。目には写らないけれど、愛されているという自覚が有る限り、愛する人との絆は、今も続いているのだと希望を持って欲しいですね。そしてその縁は、来世にも来々世もつづいていくものなのです。このことをお伝えしたくて、日々小地蔵はレビューを書き綴っております。