劇場公開日 2010年4月10日

「さわやかなハッピーエンド+ちょっと人生を考えさせられる深みもあって、お勧めできますよ。」ダーリンは外国人 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0さわやかなハッピーエンド+ちょっと人生を考えさせられる深みもあって、お勧めできますよ。

2010年4月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 本作は、実体験に基づく人気コミックエッセイシリーズの映画化したもの。
 日本はもっと多くの外国人を受け入れ、国際都市、国際国家として繁栄していくべきだとは思います。でもそれを個人のレベルでいえば、こんな国際結婚が増えていくことになるのでしょうかねぇ。

 とにかく本作は演出が上手いのです。見せ場を心得ていて、大事なシーンは、丁寧に描きます。ところがその前後の導入のところでは、大胆にシーンを飛ばして、テンポ良く繋いでいきます。だからラストまでの起承転結がきっちりしていました。
 それと映像がとっても綺麗で、オシャレなんです。基本がラブストーリーなので、全体にまぁ~い感じが、濃厚に漂っています。それでいて、しっかり人生を考えさせる、泣かせどころもあって、奥の深いドラマなんですね。
 加えて、漢字オタクのトニーが唐突に喋る、四文字熟語や格言が、駄洒落のように聞こえて、可笑しかったです。本人は、大まじめなんですがね。

 主人公の漫画家デビューを目指すイラストレーターのさおりは、意外にも英語が大の苦手だったんです。そして仕事がらみで知り合ったアメリカ人ライターのトニーは漢字の美しさに一目惚れして来日した、日本語ペラペラの語学オタクでした。
 ふたりは、意気投合したものの、3度目のデートでもただの友達でした。ヤキモキするさおりに対し、トニーはマイペース。それでも、やがて恋愛に発展し、二人は同棲するようになります。
 恋愛から互いの家族ヘの紹介、結婚へと歩む道を、異文化同士のちょっとしたカルチャー・ショックも描きながら楽しく見せてくれました。

 問題は、ここから。結婚を意識出したさおりは、姉の結婚式にいきなりトニーを連れて行きます。母の一江には気に入って貰ったのに、父の正利には漫画家を目指す約束で家を出たのに結婚に逃げ込むのかと、反対されてしまいます。
 家族の反対の理由が、外国人だからというのではなかったことが、意外でした。父親に何とかふたりの関係を認めさせるべく、さおりは漫画家としての仕事に没頭します。そしてトニーから、アメリカの実家に一緒に行かないかと誘われたことから、苦手な英会話の勉強も始めます
 優しいトニーは、そんなさおりを支えるべく家事をかって出るのです。まるで主夫です。
 全ては、トニーとの結婚のためにと、無我夢中でさおりは、次第に大事なことを見失っていきました。気がつくと、トニーの家事の仕方に文句ばかりいうし、トニーが話をしたいといっても、今忙しいから後にしてと、仕事場にこもったり、ふたりで暮らし始めたころの楽しい日々に比べて、すっかりコミュニケーションが取れなくなっていました。そんなところに、さおりの父親が結婚に反対していることを隠していたこともトニーにバレてしまいます。
 タダでさえ感受性の高いトニーは、何で話してくれないのと、ショックを隠しきれません。そしてさおりを残して、単身で実家へ帰ってしまったのです。

 残されたさおりは、実家に戻って、一江に愚痴を言います。やっぱり国際結婚って難しいもんだわと。けれども一江は、自らの結婚生活を引き合いに、優しく諭します。「自分と違うのは、相手が外国人だからじゃなくて、お互い別の人間だからよ。違いがあっても許し合って、一緒にやっていくのが夫婦なの」と。
 ホントに意外です。てっきりカルチャーギャップをクローズアップしていく作品だと思っていましたから。でもこのシーンで、なるほど!と思いました。相手が日本人だろうが外国人だろうがレプタリアン(宇宙人)(^_^;)だろうが、違いを認め合い、理解し合ってつき合うのが大切なのに変わりはないということだったのですね。むしろ大きなギャップを乗り越えてこそ、互いの愛と絆が深まるのかも。
 本作が軽いだけの話ではない面を見せる、一番いいシーンでした。

 それと、あまり目標に夢中になりすぎると、周りを振り回している自分を見失ってしまいがちになることです。トニーのために、漫画家になる目標も、ホントは自分のためにやっていることをすり替えてしまったのです。
 自分の都合のいい理由を勝手に押しつけて、大事な人と関係を疎遠にしてしまうことってありがちでしょう。きっと、本作を見ていると、わが身を振り返りたくなるでしょう。
 井上真央の愛らしい表情もかわいかったけれど、初の主役に抜擢されたジョナサン・シェアの演技がいいのです。日本に13年も暮らしていて、奥さんは劇中と同じ日本人。日本語と日本文化に精通して、外国人らしくないナイーブなところが良かったです。

 さわやかなハッピーエンドでお勧めできますよ。

流山の小地蔵