ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男 Part.2 ルージュ編 : 映画評論・批評

2009年11月10日更新

2009年11月7日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

メスリーヌのアナーキスト的資質を描き切った後編

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バンサン・カッセルがフランス史上に残る犯罪者に扮した「ジャック・メスリーヌ」。次から次へと事件が起こる怒濤の日々を描いたPart 1に比べると、Part 2は落ち着いたテンポで、より人物描写に重きが置かれている。

今回はマチュー・アマルリック扮する脱獄の天才など、新たな相棒が登場。強盗、逮捕、脱獄を繰り返すなか、マスコミのインタビューに応じたり、一方で自分をごろつきと断罪したジャーナリストを誘拐、殺害しようとするなど、短気で本能的な彼の行動が描かれる。宿敵ブルサール警視との対峙で意外にあっさり逮捕を受け入れ、警視にシャンペンを振る舞うところは、彼の型破りな性格を象徴するエピソードだ。

とはいえ、これはヒーロー礼賛映画などではない。冒頭に表れる、警官隊の襲撃によって蜂の巣にされ、血に染まったメスリーヌの死体は、犯罪者の悲惨な運命を容赦なく描き出す。メスリーヌもまた、「金を奪うのは銀行や金持ちからだけ」というポリシーを持ちながらも、「犯罪行為においてヒーローは存在しない」とはっきり認識していた。それでも彼を犯罪に駆り立て続けたものは何か。それは警察に代表される国家権力に対する憎悪と、何ものにも縛られたくないという天性のアナーキスト的資質だ。その結末が悲劇的にしかなり得ないことを自覚しながら、ついにやめられなかった彼の性分を描き切ったところに、この作品の成功の秘訣がある。

佐藤久理子

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