「エンターテインメント仮時代劇。」十三人の刺客 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
エンターテインメント仮時代劇。
傑作時代劇をリメイク…とはいえ、すっかり三池ワールド。
これはもう時代劇というより現代劇なんだな、と思った。
斬って、斬って、斬りまくれ~!!の如く、アクション全開。
バッサバッサと斬られていく人数の多さに引き換え、
肝心の刀さばきに魅了されるのは松方弘樹、ただ一人。
映像といい、台詞回しといい、昔の時代劇とは格段の差。
しかしこれが従来の三池映画だという独自性は心地良い。
モノマネ作品を作る必要はないし、今の時代感性に即した
内容に作って魅せてやろう、という意気込みは感じられる。
そしてそこに役所広司や山田孝之のような従順で演技派
の役者陣を揃え、世代を超えた娯楽大作に仕上げている。
まぁ確かに気味の悪いシーンは多すぎるのだが…^^;
元の話が面白いので、暗殺現場までの道のりが険しいほど
観ているこちらは楽しめる。クライマックスの50分に渡る
斬り合いバトルはアクション映画そのものになっているが、
各々集められた刺客たちの人物像とその繋がりが面白い。
13人のうち、ほとんど一部の人物だけに絞られてしまうが、
彼らに背景色が存在するからこそ、いざ死に参ろうとする
意気込みに共感でき、絶対無比の戦いに勝ちを見出せる。
土台無理だろう、の先入観が覆っていく気持ちよさ。
出色は稲垣吾郎の暴君ぶり(よくぞ引き受けました♪)
悪役はこのくらい非道で殺したくなる人間でないと甲斐無。
市村正親も敵の腹心を上々の演技で魅了し、彼と同門で
あった主人公とのクライマックスまで緊張感を保ち続ける。
伊勢谷友介が演じた山民は、どう見ても七人~の菊千代
とダブって仕方ないが^^;彼はサービス映像に事欠かない。
どちらかというともっと泥臭いイメージを抱いていたが、
終わってみればエンターテインメント仮時代劇という感じで
へぇ?と思わせるラストの余韻のなさに、かえって笑えた。
やはり三池ワールド。
(なにはどうあれ、過去の名作が甦るのは嬉しいことですね)