「男たちの命を賭した熱い戦い」十三人の刺客 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
男たちの命を賭した熱い戦い
映画ファンとしても有名なライムスターの宇多丸さんが「数年ぶりに大満足で映画館を出た」「リメイク作品として大正解」などと大絶賛していたのを聞き、是非観てみたいとDVDをレンタルして鑑賞いたしました。
ちなみにオリジナル版は未鑑賞です。
結論としては、「若干の不満点はありつつも大満足の一作」という感じ。
役者陣の演技はもちろんのこと、オリジナルの映画からの改変によって生まれるカタルシス、現代の映像技術でより迫力を増した戦闘シーン。
「なんでわざわざリメイクしたんだろう」っていう作品も非常に多いですが、この作品はきちんとオリジナルの面白さを現代の技術でブラッシュアップしたリメイクとして正しい姿の作品だと思いました。
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将軍の弟である松平斉韶(稲垣吾郎)は民を虐げ私腹を肥やす悪逆非道の暴君であった。暴君・斉韶を止めるために、彼を討つ作戦が秘密裏に進められ、御目付役の島田新左衛門(役所広司)がその命を受けた。仲間を集め、参勤交代中に斉韶討伐する作戦を立てる島田であったが、かつて同じ道場で鎬を削った旧友である鬼頭半兵衛(市村正親)が島田の不審な行動に気付き、斉韶の腹心として島田の前に立ちはだかるのであった。
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多くのレビュアーさんが絶賛していることですが、とにかく暴君の松平斉韶を演じる稲垣吾郎さんの怪演が素晴らしい。稲垣吾郎さん自身のイメージも手伝って、パッと見は二枚目で知的な雰囲気があるのに、その実、人間として決定的に何かが欠落しているような、頭のおかしいサイコパスっぽさが滲み出るような素晴らしい演技。「この男を討たないとこの国は終わりだ」というのが観客にもありありと伝わってきますし、だからこそ刺客たちが行なう斉韶討伐にもカタルシスが生まれます。
また、オリジナルには無かった四肢を切断された女性が書いた「みなごろし」の書が伏線となり、物語の盛り上がりどころで効果的に使用される場面。ライムスター宇多丸さんも「こういうの観たくて俺は映画観てるんだ!」とテンション上げて語るほどに、私も含めた観客の「アガるポイント」でした。
かつての旧友であった島田と鬼頭が対立する形で再開し、お互いの「武士とは」という持論をぶつけ合う展開も素晴らしかった。「斉韶が国政に加わったら国民が大変なことになる」というのは共通認識として持っているのに、民衆のために斉韶を討とうとする島田に対して、鬼頭は「いかなることがあっても武士は主人に仕えるもの」という信念の元に立ちはだかってきます。現代ではおよそ考えられない思想です。二人の信念がぶつかり合い、知略を巡らせた戦いが繰り広げられるのは実に見応えがありました。
ただ、正直不満点も無いわけではないです。
せっかく参勤交代のルートを予測し、先回りして町ごと買い取って、斉韶率いる一団を迎え討つ要塞を作り上げていたのに、敵を罠でちょっと数を減らしたら後は作戦も無くチャンバラを繰り広げるというのは「無策過ぎでは?」と思ってしまいました。もちろんチャンバラシーンはアクロバティックで実に見応えがありましたが、せっかく町ごと買い取って町民も総出で町を要塞化していたのに、用意していた罠はあれだけだったのは少々違和感があります。それまで何度も「たった13人でどうやって数百の兵を倒すか」という思案を巡らすシーンがあるのに、結局最後は大人数相手にチャンバラ。そしてそのチャンバラシーンもめちゃくちゃ長い。映画の上映時間の3分の1、約50分に及ぶチャンバラシーンは「カッコいいし迫力満点で見応えある」と思うと同時に「長くてダレる」と思ったのも正直なところ。
まぁ、上記のような多少の不満点はありますが、この映画全体の面白さに比べたら些末なものです。本当に面白い映画でした!オススメです!