「動物たちを愛する人たちに、ひたすら感謝するのみ」犬と猫と人間と こもねこさんの映画レビュー(感想・評価)
動物たちを愛する人たちに、ひたすら感謝するのみ
この作品を観ている最中、私の脳裏に浮かんだのは、「間引き」という言葉だった。
昔々、子供が多かった時代の親たちにとって、食いぶちを減らすために、女の子を遊郭に売ったり、男の子は金持ちの家の小僧へ追いやったり、それらができないときには遠くの山に捨てる、ということは当然の行為だった。近代になって、そんな非道なことが許せなくなったのだが、「間引き」という悪しき文化が、今も人とペットの間に根強く息づいていると感じるのは、捨てる理由だ。「リストラ」「離婚」「引越し」「家族が増えた」など、人間社会の普通の出来事がペットの命を縮めているのは、昔の「間引き」と何ら変わらないものだ。映画の中で話される、「日本の犬には生まれたくない」との言葉は、日本の文化への批判にさえ思えた。
そんな悪しき日本の社会のペットたちにも、希望があることをこま映画は切々と語る。そこから愛護センターの人たちだけでなく、一般の人たちの努力があることを初めて観る者にも気づかせてくれる。何より感動的だったのは、子どもたちのグループが捨てられた犬たちの世話をし、もらってくれる人を自分たちで探す姿だ。そこには、悪しき文化を凌駕する、動物を愛する優しい心をもつ子どもたちがこの国に育っていることが伺える。これは、ペットのことだけではない、我々の未来への希望にさえ感じられるものだった。
この映画からいくつもの感動を得た私は、実は小学生の頃にオス犬の「間引き」をやった経験者だ。だから、ペットを捨てる者たちに怒りはなく、ガス室で死んでいく犬たちに合掌することしかできない、情けない人間なのだが、最近、捨てたと思っていた犬が、実は母の知人のもとで飼われていたことを知って、心に開いた穴が半分ほど満たされたような気持ちになった。私の飼い犬だった彼は、大事に育てられ、18歳まで長生きしたらしい。この映画で登場する、ペットの命を救う人々には「感謝」という言葉しか見つからないのは、たぶん私だけではないだろう。