ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式のレビュー・感想・評価
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ちょっとどころじゃない可笑しさ
ちょっとどころか、かなりおかしなお葬式。
日本にも伊丹十三監督作品の『お葬式』の様に、その場に集う人々の群像劇で大いに笑わせる作品が有るが。この作品でのお葬式に集まる人間模様もかなり可笑しい。
才能溢れる弟に嫉妬心を持っている長男。
娘のやる事なす事気に入らない偏屈な父親に、その娘と実直な婚約者。それによからぬ薬で金儲けをしている弟。
更には過去に一度だけ関係を持った事で“期待”をして参加する男。
女なんか“やっちまえばこちらになびく”と言う障害を持つ叔父。
死の儀式に際して自分の病気を心配する男。
そして見知らぬ男が1人…等々。
いや〜面白かった(笑)
多少笑わせ方が“ある出来事”により…と、片寄り過ぎている気がしないでは無いのですが、面白いのだから仕方が無い。もう一旦笑わせてしまえば勝ち…とばかりに、このネタで引っ張れるだけ引っ張る。
そこに出演者同士の確執が隠し味となって生きて来る。
ノンストップで一気に走りきる90分間。
お薦めです。
(2009年8月3日シネマート六本木/スクリーン1)
厳粛な場面で笑いが止まらないのは何故?
フランク・オズは、映画監督というよりも『スター・ウォーズ』のヨーダの声優として有名かもしれない。しかし、コンスタントに秀作のコメディー作品を発表している、コメディー職人でもあったのだ。そんなオズ監督の新作のテーマは「お葬式」。
厳粛な雰囲気の中に立たされると、妙に笑いが止まらなくなることってよくある。笑いをこらえようとすればするほど笑ってしまって周囲のひんしゅくをかってしまう。本作の主人公の場合は、喪主として父の葬儀を無事に終わらせたいだけなのに、何故か様々なトラブルが生じて大ピンチに。一生懸命やればやるほど、トラブルはエスカレートして行く。そんなドタバタを「お葬式」という厳粛な場で展開させてしまうとは、さすがはコメディー職人、オズの魔法だ。下ネタあり、奇行あり、強烈なブラック・ユーモアありと、ともすれば下品になりかねない内容を、個性派俳優たちの確かな演技のもとで、上品に爽やかに“魅せる”手腕は見事だ。これぞブリティッシュ・コメディーの真髄といえよう。「お葬式」には、普段顔を合わせたくない親類が集まる。様々な思惑を抱えつつも、体裁だけは整えようとする。そこに群像喜劇が生まれる。とにかく、あれよあれよの内に、ありえない方向に物語が展開して行き、大笑いしながらもグイグイ引きこまれる。斬新な映像テクニックや、社会に対する問題定義や、強い作家性は無いけれど、映画史上に残る名作ばかりが映画ではない。一発目のセリフから笑かし、ラストシーンでちょっぴりホロリとさせ、鮮やかなオチで終わる。「あ~、面白かった」と、いい気持ちで映画館を後にできる、そんなただ楽しむだけの映画は絶対に必要だ。本作はハリウッドでリメイクが決まっているらしいが、ブリティシュ・コメディーをアメリカン・ジョークに巧くシフトできるのだろうか?単なるおバカ映画にならないことを祈るのみだ・・・。
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