「厳粛な場面で笑いが止まらないのは何故?」ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式 Chemyさんの映画レビュー(感想・評価)
厳粛な場面で笑いが止まらないのは何故?
フランク・オズは、映画監督というよりも『スター・ウォーズ』のヨーダの声優として有名かもしれない。しかし、コンスタントに秀作のコメディー作品を発表している、コメディー職人でもあったのだ。そんなオズ監督の新作のテーマは「お葬式」。
厳粛な雰囲気の中に立たされると、妙に笑いが止まらなくなることってよくある。笑いをこらえようとすればするほど笑ってしまって周囲のひんしゅくをかってしまう。本作の主人公の場合は、喪主として父の葬儀を無事に終わらせたいだけなのに、何故か様々なトラブルが生じて大ピンチに。一生懸命やればやるほど、トラブルはエスカレートして行く。そんなドタバタを「お葬式」という厳粛な場で展開させてしまうとは、さすがはコメディー職人、オズの魔法だ。下ネタあり、奇行あり、強烈なブラック・ユーモアありと、ともすれば下品になりかねない内容を、個性派俳優たちの確かな演技のもとで、上品に爽やかに“魅せる”手腕は見事だ。これぞブリティッシュ・コメディーの真髄といえよう。「お葬式」には、普段顔を合わせたくない親類が集まる。様々な思惑を抱えつつも、体裁だけは整えようとする。そこに群像喜劇が生まれる。とにかく、あれよあれよの内に、ありえない方向に物語が展開して行き、大笑いしながらもグイグイ引きこまれる。斬新な映像テクニックや、社会に対する問題定義や、強い作家性は無いけれど、映画史上に残る名作ばかりが映画ではない。一発目のセリフから笑かし、ラストシーンでちょっぴりホロリとさせ、鮮やかなオチで終わる。「あ~、面白かった」と、いい気持ちで映画館を後にできる、そんなただ楽しむだけの映画は絶対に必要だ。本作はハリウッドでリメイクが決まっているらしいが、ブリティシュ・コメディーをアメリカン・ジョークに巧くシフトできるのだろうか?単なるおバカ映画にならないことを祈るのみだ・・・。