劇場公開日 2010年2月6日

「明らかに話が薄っぺらい原作の欠点を脚本にするとき、練り込む必要があったのではと感じた作品でした。」食堂かたつむり 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0明らかに話が薄っぺらい原作の欠点を脚本にするとき、練り込む必要があったのではと感じた作品でした。

2010年2月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 前半の出足は良かったと思います。言葉を失った倫子が食堂を始めるまで、いろんな食の着想が、ビジュアルとしてファンタジックに語られて、いかにも女性監督らしさが溢れていました。
 なぜかおっぱいの形をした山をいただき、土地で取れる素材を次々料理していくところは、『西の魔女が死んだ』に似ています。また、倫子がしゃべれないこともあり、台詞少なめにほのぼのと料理が作られていくテンポは、『かもめ食堂』か『めがね』のようでもあるのです。
 但し、後半の唐突で駆け足で綴られてしまうストーリー展開に、初監督の気負いを感じてしまいました。途中から、何を描いた作品か、見えなくなってしまうところが残念です。

 食堂かたつむりがオープンして、お客さんが次々幸福になる奇跡が起きていくという仕掛けは面白かったです。だけど、メニューに虫が混入していたという事件から、幸福になる奇跡というエピソードが描かれなくなりました。その代わりに、母ルリコの末期癌であることが判明したことと、それでもルリコにプロポーズする男が登場して、倫子の手料理で結婚披露パーティが行われる話に。

 結局本作は料理の話よりも、エキセントリックなルリコを子供の頃から嫌ってきた倫子が、ルリコの母親としての愛情に気がつかされるというストーリーだったのです。しかし、食堂を立ち上げるまでのエピソードを丁寧に描き込んだために、後半の肝心なところが凄く駆け足になって、倫子とルリコとの間で起きる哀しい出来事に涙をそそられませんでした。

 あと本作のマスコット的存在として登場するのが、ルリコのペットである子豚のエルメス。すっかり柴咲コウに懐いた子豚ちゃんであったそうで、すごくかわいいし、なぜか話ができない倫子とも会話ができて、ユーモラスでした。
 そんなかけがえのない家族なのに、あっけなく結婚披露パーティの生け贄にされてしまいます。『ブタがいた教室』では、飼っていた豚を食べるかどうかで1年間議論しているのに、何ともあっけない結論の出し方。

 あっけないのは、倫子が喋れるようになるというエピソードも、なんだという設定。そんなにたやすく戻れるのだったら、早く試すべきでなかったかと突っ込みたくなります。 それぞれのエピソードはなかなか面白いアイディアが散りばめているのだけれど、それがぶっぎりの羅列に見えてしまうのは、それぞれのシークエンスが伏線になっていないことが上げられます。
 前半の出足は良かったと思います。言葉を失った倫子が食堂を始めるまで、いろんな食の着想が、ビジュアルとしてファンタジックに語られて、いかにも女性監督らしさが溢れていました。
 なぜかおっぱいの形をした山をいただき、土地で取れる素材を次々料理していくところは、『西の魔女が死んだ』に似ています。また、倫子がしゃべれないこともあり、台詞少なめにほのぼのと料理が作られていくテンポは、『かもめ食堂』か『めがね』のようでもあるのです。
 但し、後半の唐突で駆け足で綴られてしまうストーリー展開に、初監督の気負いを感じてしまいました。途中から、何を描いた作品か、見えなくなってしまうところが残念です。

 食堂かたつむりがオープンして、お客さんが次々幸福になる奇跡が起きていくという仕掛けは面白かったです。だけど、メニューに虫が混入していたという事件から、幸福になる奇跡というエピソードが描かれなくなりました。その代わりに、母ルリコの末期癌であることが判明したことと、それでもルリコにプロポーズする男が登場して、倫子の手料理で結婚披露パーティが行われる話に。

 結局本作は料理の話よりも、エキセントリックなルリコを子供の頃から嫌ってきた倫子が、ルリコの母親としての愛情に気がつかされるというストーリーだったのです。しかし、食堂を立ち上げるまでのエピソードを丁寧に描き込んだために、後半の肝心なところが凄く駆け足になって、倫子とルリコとの間で起きる哀しい出来事に涙をそそられませんでした。

 あと本作のマスコット的存在として登場するのが、ルリコのペットである子豚のエルメス。すっかり柴咲コウに懐いた子豚ちゃんであったそうで、すごくかわいいし、なぜか話ができない倫子とも会話ができて、ユーモラスでした。
 そんなかけがえのない家族なのに、あっけなく結婚披露パーティの生け贄にされてしまいます。『ブタがいた教室』では、飼っていた豚を食べるかどうかで1年間議論しているのに、何ともあっけない結論の出し方。

 あっけないのは、倫子が喋れるようになるというエピソードも、なんだという設定。そんなにたやすく戻れるのだったら、早く試すべきでなかったかと突っ込みたくなります。 それぞれのエピソードはなかなか面白いアイディアが散りばめているのだけれど、それがぶっぎりの羅列に見えてしまうのは、それぞれのシークエンスが伏線になっていないことが上げられます。
 原作に忠実なのはいいのです。でも明らかに話が薄っぺらい原作の欠点を脚本にするとき、練り込む必要があったのではと感じた作品でした。

 それでも喋れない倫子の気持ちを、表情で表現する柴咲コウの演技と、嫌みだけれど憎めないキャラのルリコを余貴美子の演技は、さすがです。
 それでも喋れない倫子の気持ちを、表情で表現する柴咲コウの演技と、嫌みだけれど憎めないキャラのルリコを余貴美子の演技は、さすがです。

流山の小地蔵