劇場公開日 2009年10月9日

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「本作の基本は復讐劇でした。信念を絶対曲げない男としてディーゼルに惚れ込むことでしょう。」ワイルド・スピード MAX 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0本作の基本は復讐劇でした。信念を絶対曲げない男としてディーゼルに惚れ込むことでしょう。

2009年8月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 タイトルから、カーレースものを想像される人も多いことでしょうけれど、本作の基本は復讐劇でした。
 もちろん激しいカーアクションも健在ですが、何よりも復讐に至るプロセスが秀逸です。主人公のため犠牲になる恋人と、その恋人のために命をといわず一矢報いるべく敵の奥深く単身乗り込んでいく男気に感動し、涙しました。
 アクションの裏側に深い愛を感じる傑作です。

 主人公のドミニクは、前作から見ている人ならとんでもないトラック強盗野郎ということは、ご存じでしょうけれど、そんな悪人が、恋人を殺した麻薬組織のボスに復讐するため、なんとFBI捜査官とタッグを組んでしまうのです。
 悪が巨悪を倒すなかで、ヒーローになっていくのは、ドミニクという信念を絶対曲げない男としてのキャラが立っていて、とても魅力的な主人公なんです。きっと男性の観客でも、ドミニクと演じているディーゼルに惚れ込むことでしょう。
 ドミニクに惚れ込み、その信念に尊敬すら感じていた意外な人物が、FBI捜査官ブライアンでした。ブライアンは、ジャック・バウアータイプの猪突猛進型。地の果てまでも犯人を追い詰めます。それが昂じて、前作では逮捕寸前に南米に逃がしてしまったようなのです。

 ドミニクとブライアンの関係は複雑。ドミニクの妹の恋人がブライアンでした。指名手配中の泥棒とFBI捜査官が仲良く夕飯しているのは、何とも珍妙ですね。
 しかも二人は若い頃からのドリフト族でライバル同志だったのです。ブライアンのお宝はカスGのGTR改造車。結構マニアでしょう。

 ドミニクがロスに極秘で戻ってきた理由は、恋人のレティが麻薬の運び屋をやっているとき、何者かに殺害された真相を探り、復讐することでした。

 ブライアンの協力も得て、調べていくうちに、麻薬組織のボス“ブラガ”の関与が浮上。ブラガを追い続けているブライアンに、ドミニクが潜入捜査を申し出ることから、物語は緊迫したアクションシーンへ展開していきます。

 ここでポイントなのが、レティはなんで南米から一足先にロスに戻って、危険な麻薬の運び人という仕事を引き受けたのかという謎が残ります。
 それが自分たちの自由にための賭であったことを知ったドミニクの悲しみと憤りは痛いほど、心に伝わってきました。

 ブラガのアジトに向かうとき、ガイドに死にに行くようなものだと言われても、それでも俺は行くと言い切るところに、レティへの愛を強く感じましたね。ディーゼルが一段とカッコよかったです。

 カーアクションも、リュック・ベッソンが真っ青になり、『トランスポーター』シリーズが霞んで見えたほどのダイナミックさでした。

 アクションでは、冒頭から飛ばします。
 ドミニクの強盗団がタンクローリーごとガソリンを強盗するシーンでは、何台も繋がったタンクローリーの連結器を外して車ごと盗むという手荒な手口。高速で動いているタンクローリーにバックで近づいて、連結器を填めてしまうシーンは、サーカスの曲芸を見ているようでした。
 それを振り払おうとするタンクローリーは横転し爆発炎上します。ここからが凄い!複数のタンクローリーに前後をふさがれたドミニクは、炎上するタンクローリーめがけて突っ込みます。そして跳ね上がり回転する、わずかな隙間に潜り込んで見事脱出してしまいます。
 似たようなクライシスは他にもあり、こりゃあ凄いと思いましたぁ!

 麻薬組織からの逃走シーンでは、銃撃と体当たりの車のつぶし合い。ほとんど『デス・レース』の乗りです。コースが決まっていない分、こっちの方がダイナミック!
 なかでも鉱山の坑道のなかでのカーチェイスシーンというのは、本作が初めてではないでしょうか。

 怒濤のようなカーチェイスの付けは、ドミニクへの警察包囲網が押し寄せていたことです。いつもなら鮮やかにトンヅラするところなのに、俺はもう逃げないと自首してしまいます。レティを失った影響でしょうか?

 いくら麻薬組織の捜査に囮となって、活躍したとはいえ、無罪放免は難しいでしょう。そうなると、このシリーズは本作で終わってしまうのか?

 いえいえ、ラストをご覧ください。超ドンデン返しで痛快に終わります。それを見ると義弟ブライアンの義理堅さが分かりますが、仕事上彼の将来が気になりますねぇ。

流山の小地蔵