劇場公開日 2009年12月5日

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「面白い!それでもAを付けない理由は・・・」インフォーマント! いおりさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5面白い!それでもAを付けない理由は・・・

2009年11月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

「ジェイソン・ボーン」シリーズを始め、
アクション俳優としての一面を持つマット・デイモン

「エリン・ブロコビッチ」や「チェ」二部作など、
実在の人物をコッテリ描くのに長けた監督ソダーバーグ

その二人がタッグを組み実話基づいた社会派コメディを作った
そう聞いただけで実にそそられ興味津々、
一体どんな作品なのかあえてそれ以上は情報を持たずに鑑賞した。

マット・デイモン扮するマーク・ウィテカー、
生化学者にして農業関係の大企業ADMの重役、
そんな彼が日本企業(協和発酵や味の素!)との闇カルテルを内部告発
FBIと協力し証拠集めに奔走するのだが、
彼自身の犯罪も明るみに出て事件は思わぬ展開をしていく・・・

設定だけ見ると重厚なストーリーを感じさせるが列記としたブラックコメディ
実話をベースにした興味深い人間性を見せるマーク・ウィテカーと
それに関わった人々のお話だ。

開始序盤はややのんびりした進みに退屈に感じていたが、
マークという人間の違和感が見え隠れしてくると、俄然話は動き出す。

大企業で立派な地位を気づいた男という肩書きと
育ちが良くて人の良さそうな太っちょな風貌も手伝って、
この男1人がFBIや弁護士をブンブン振り回し始める

演じるマット・デイモンは役作りのためプックリ太って
見事に風変わりでつかみ所がないくせに憎めないという難物になりきった。
何でも、役作りは食べて寝て太るだけだから簡単だったそうだが、
あのジェイソン・ボーンのどこか鋭い部分は完全に曲線になり、
役者ってすげえ・・・と今更ながら思わされた。

そこに何ともおかしなBGMがこの映画を彩り、
人を食ったマークにピッタリのコミカルな雰囲気がかもし出された。
007気取りのくだりや、隠しカメラの調子を確かめるシーンなど、
真面目なコミカルさに何度もため息に近い失笑を起こさせられる。

また中盤からの話の展開はとても上手い。
いったい真実は何なんだ?という疑問に興味を抱かされ、
それが何となく見えたと思ったら、さらに話は膨らんでいき、
見えそうに思えた話の底はなかなか見えてこない。

そして、マークという小さな雪玉は、
止まることなく転がり続けどんどん大きくなっていく。
そうなるといざ壊れるときの破壊力はその大きさの分だけ大きくなる。
いったい彼はどうなっていくのか?
唖然としつつも、いつの間にかその行方に目が離せなくなっている。

思い出したのは、小学生の頃についたつまらないウソ。
持っていない人気ゲームをやったと皆に自慢した。
取り繕っていくうちに自分でも何がなんだかわからなくなった。
幸いだったのは途中で 「ウソついてごめんなさい」 を言えたこと。
もし、バレなければ最悪で良心の呵責すら麻痺してしまったかもしれない。
それは痛い目に有って学習した今だからこそいえることだ。

マークはそんな痛みを知らない小学生と何ら変わらない。
その純真無垢ともいえる奇妙奇天烈な男、彼は確実に病気だ。

最初は彼を面白がっていたが、
だんだん強い苛立ちを感じ、
さらに最後は気の毒にすら感じてしまった。
今まで良くある映画とは違った面白さのある作品だと思う。

しかし、コレだけ褒めつつもAはつけがたい。
理由は単純、オレはマーク・ウィテカーみたいなヤツが大嫌いだからだ。

でもそう感情を揺さぶられたのはよく出来ている映画だった証拠だろう。 2000円

いおり